サマリー
◆世帯属性別に試算すると、2024年6月から実施されている定額減税の世帯あたり減税額は、エネルギー高対策の終了などによるエネルギー代の増加額(同年6月から1年間)を上回る。そのため家計所得の下支え効果は大きいとみられる一方、個人消費の喚起を通じた経済効果は限定的だろう。3.3兆円の定額減税によるGDPの押し上げ効果は0.2~0.5兆円程度にとどまると試算される。
◆岸田文雄政権は2024年の骨太方針においてEBPM(証拠に基づく政策立案)を推進・強化するとの考えを示したが、定額減税はEBPMに沿った政策とはいいにくい。政府は今後、2030年度までを対象期間とする「経済・財政新生計画」を定め、経済・財政一体改革を推進する方針である。これまでの家計向け支援策の効果や効率性をEBPMの観点から検証するとともに、必要な情報インフラの在り方についての検討も進めるべきだ。
◆定額減税の消費喚起効果は小さく持続性も低いことを踏まえると、個人消費の本格回復には恒常所得ともいえる所定内給与の継続的な増加が重要だ。この点、日本商工会議所・東京商工会議所や日本労働組合総連合会の集計結果、厚生労働省「賃金改定状況調査」を踏まえると、2024年は中小・零細企業でも賃上げが加速した可能性が高い。マクロで見た所定内給与の伸び率が夏場にかけて大きく高まるかどうかが当面は注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
定額減税は所得下支え効果が大きいものの経済効果は0.2~0.5兆円程度か
一斉給付に近い形になり、減税額はエネルギー代の増加額を上回る
2024年06月14日
-
日本経済見通し:2024年5月
経済見通しを改訂/所得環境の改善などで緩やかな景気回復が継続
2024年05月23日
同じカテゴリの最新レポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
主要国経済Outlook 2025年6月号(No.463)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年05月26日
-
世界経済は落ち着きを取り戻すのか
2025年05月26日
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日