サマリー
◆新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて発出された3回目の緊急事態宣言は沖縄を除き、6月20日をもって解除された。期間中の実質GDPへの影響は▲1.3兆円程度と試算される。1回目(同▲3.8兆円程度)よりもかなり小さく、2回目(同▲1.1兆円程度)よりも大きい。7月に入ると東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されるが、経済効果は5,200億円程度と見込んでいる。
◆7月末までに1日あたり100万回のワクチン接種という政府目標を達成する可能性が高いことから、当社の経済見通しは上方修正の余地が大きくなった。仮に1日あたり100万回の接種ペースを年末まで維持し、感染拡大の抑制と両立する形で人出が段階的に回復すれば、2021年度の実質GDP成長率は+5.0%に高まる可能性がある。だが当面は人出の急増やインド由来の変異株(デルタ株)の流行により、4回目の宣言が発出されるリスクがある。他方、輸出は引き続き日本経済を下支えする見込みであるが、半導体不足による自動車輸出への影響には注意が必要だ。
◆経済の正常化が国内外で進む中、資源価格が高騰している。仮に2021年6月以降の交易条件が5月から横ばいで推移すると、2021年度に約15兆円の所得が海外に流出し、企業が約10兆円、家計が約5兆円を負担するとみられる。資源高が企業に与える影響を業種別に分析すると、運輸・郵便は価格転嫁率がとりわけ低く、価格転嫁に長い時間を要する。感染拡大防止策で経済活動が抑制される中、資源高が企業収益を圧迫するという二重苦が当面続く可能性がある。一方、電子部品は投入物価の上昇が限定的で価格転嫁率が高いため、資源高の中でも好調を維持するだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
第225回日本経済予測
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年05月22日
-
主要国経済Outlook 2025年5月号(No.462)
経済見通し:世界、日本、米国、欧州、中国
2025年04月24日
-
「相互関税」騒動と日本の選択
2025年04月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日