日本経済見通し:人手不足が日本経済に与える影響を検証する

日本経済は緩やかな回復軌道を辿る見通し

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2014年08月21日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 橋本 政彦
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 久後 翔太郎
  • 永井 寛之

サマリー

経済見通しを改訂:2014年4-6月期GDP一次速報を受け、経済見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2014年度が前年度比+0.7%(前回:同+1.1%)、2015年度が同+1.5%(同:同+1.5%)である(→詳細は、熊谷亮丸他「第182回 日本経済予測」(2014年8月20日)参照)。日本経済は、2014年4-6月期に消費税増税の影響で一時的に低迷したものの、7-9月期以降、緩やかな回復軌道を辿る見通しである。①足下で消費税増税に伴う悪影響がおおむね一巡したとみられること、②米国向けを中心に輸出が徐々に持ち直すことなどが、日本経済の好材料となろう。日本経済のリスク要因としては、①実質所得低迷による個人消費の停滞、②中国の「シャドーバンキング」問題、③地政学的リスクを背景とする原油価格高騰や世界的な株安の進行、④米国の出口戦略に伴う新興国市場の動揺、の4点に留意が必要である。


人手不足が日本経済に与える影響は?:今回のレポートでは、人手不足が日本経済に与える影響について検証した。労働需給は非常にタイトな状況が続くと見込まれるものの、労働需給のひっ迫が賃金上昇や、雇用者の待遇改善につながり、それに伴い新たに就労を希望する者が増加する(=労働力率が上昇する)という前提に基づけば、当面人手不足が日本経済の致命的なボトルネックにはならないと考えられる。ただし、上記のメカニズムが働かない場合には、就業者数は2015年度、2016年度でそれぞれ、34.3万人、66.3万人程度不足し、これによって実質GDPは2015年度が3.4兆円、2016年度が7.2兆円程度下押しされる計算となる。こうした人手不足を労働力率の上昇のみによって解消するためには、2015年度の労働力率が0.4%pt、2016年度には0.8%pt上昇する必要がある。仮にマンアワーベースの生産性上昇で補うとすれば、2015年度が0.6%、2016年度が1.3%、生産性を引き上げることが必要だ。

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