サマリー
- 経済見通しを修正:2012年10-12月期GDP二次速報を受け、2012-14年度の成長率見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2012年度が前年度比+1.0%(前回:同+0.9%)、2013年度が同+2.7%(同:同+2.7%)、2014年度が同+0.4%(同:同+0.4%)である。
- 「アベノミクス」で日本経済は再生するか?:本予測では、安倍政権の経済政策(いわゆる「アベノミクス」)について多面的に考察した。「アベノミクス」は、①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③民間投資を喚起する成長戦略、という「三本の矢」から構成される。日本経済復活の起爆剤となり得る経済政策であり、その基本的な方向性は極めて適切である。今回のレポートでは、国民が「アベノミクス」に対して抱いている4つの懸念について検証した。第一に「財政規律の維持」に失敗すると、「トリプル安(債券安・株安・円安)」を招くリスクがある。第二に、現時点では「中長期的な経済体質の改善・構造改革」が不十分だとの指摘が根強い。第三に、インフレが進行するなか、雇用者の所得が増加しないという懸念が存在する。第四に、「アベノミクス」は大企業にはメリットがあるが、中小企業には恩恵が行き渡らないとの批判もある。当社は、上記の4つの懸念を検証した結果、今後の安倍政権の課題として、とりわけ最初の2点に対処すべきだと考えている。すなわち、①選別的に公共投資を行い財政規律を維持すること、②規制緩和、TPPへの参加、法人実効税率の引き下げなど日本経済の体質を抜本的に改善する政策がとられること、という2点こそが、今後の「アベノミクス」成功のカギを握っているのである。
- 日本経済のメインシナリオ:日本経済は2012年3月をピークに景気後退局面に入ったものの、2012年11月をボトムに景気は底入れしたとみられる。今後に関しても、日本経済は、①米国・中国経済の持ち直し、②復興需要の継続や大型補正予算の編成、③日銀の「インフレ目標」導入を受けた円安・株高の進行、などに支えられて景気拡大が継続する見通しである。上記③に関連して、当社は、現状の為替市場は過度な円高が修正する局面にあると捉えている。また、実体経済との比較からは、現状の株価が依然として過小評価された水準にある可能性が示唆される。
- 日本経済のリスク要因:今後の日本経済のリスク要因としては、①イタリア・スペインの政局不安などをきっかけとする「欧州ソブリン危機」の再燃、②日中関係の悪化、③米国の財政問題、④地政学的リスクを背景とする原油価格の高騰、の4点に留意が必要である。
- 日銀の金融政策:2013年1月に日銀が「インフレ目標」導入に踏み切ったことは一定の評価ができる。今後、日銀は、リスク資産(ETF等)の購入に前向きに取り組むなど、一層の金融緩和を行う必要がある。さらに、市場とのコミュニケーション能力の向上なども課題となるだろう。
【主な前提条件】
(1)公共投資は12年度+14.9%、13年度+12.2%、14年度▲15.8%と想定。14年4月に消費税率を引き上げ。
(2)為替レートは12年度82.9円/㌦、13年度95.0円/㌦、14年度95.0円/㌦とした。
(3)米国実質GDP成長率(暦年)は13年+1.8%、14年+2.2%とした。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
ランサム攻撃を巡る動向:脅威インテリジェンス
DIR SOC Quarterly vol.9 2024 autumn 掲載
2024年10月11日
-
人的資本経営におけるエンゲージメントの重要性
エンゲージメント調査の調査項目の留意点について
2024年10月11日
-
拡大するランサム攻撃による被害:平時の対策と有事の対応方法
DIR SOC Quarterly vol.9 2024 autumn 掲載
2024年10月10日
-
「東海」「四国」など7地域で改善~石破新政権や海外情勢の動向も注視
2024年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2024年10月09日
-
「未婚男性は極端に短命」というのは誤り~未婚男性にとっても「年金の繰り下げ」は有用
2024年10月11日
よく読まれているリサーチレポート
-
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
-
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
-
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日
米金融政策を占うジャクソンホール会議の注目点は?
市場が期待するほどの大幅な利下げの示唆は期待しにくい
2024年08月16日
ハリス氏はトランプ氏に勝てるのか?そして、米国経済の行方は?
トランプ氏の優勢は継続、トランプ・リスクの発現は議会選挙とトランプ氏の匙加減次第
2024年08月02日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「国債買入減額」と「追加利上げ」が長期金利と経済活動に与える影響は限定的か
2024年7月金融政策決定会合で日銀は金融緩和の縮小姿勢を明確化
2024年07月31日
「適温」なドル円相場は130円台?
ただし10円の円高で実質GDPは0.2%悪化
2024年08月14日