日本経済見通し:「欧州危機」深刻化に伴う世界的なマネーフロー逆流のリスク

メインシナリオでは緩やかな景気拡大を想定。4つのリスクに要注意

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2012年07月20日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

サマリー

日本経済のメインシナリオ:今後の日本経済は、メインシナリオとして、(1)東日本大震災発生に伴う「復興需要」、(2)米国・中国を中心とする海外経済の持ち直し、(3)日銀の追加金融緩和が見込まれること、という「三本の矢」に支えられて、緩やかな景気拡大が続く見通しである。当社の実質GDP予想は、2012年度が前年度比+2.4%、2013年度が同+1.3%である(→詳細は、熊谷亮丸他「第173回 日本経済予測 改訂版(2012年6月8日付)」参照)。

日本経済のリスク要因:日本経済が抱えるリスク要因としては、(1)ギリシャのユーロ離脱などを受け「欧州ソブリン危機」が深刻化、(2)地政学的リスクなどを背景とする原油価格の高騰、(3)円高の進行、(4)原発停止に伴う生産の低迷、の4点に留意が必要である。特に、欧州諸国の国債のヘアカット率に関する3つのシナリオを設定した上で、日本経済に与える影響を算定したところ、最悪のケースでは、わが国の実質GDPは4%以上押し下げられるリスクがある。今後、ギリシャのユーロ離脱などをきっかけに「欧州ソブリン危機」が深刻化した場合、日本経済が「リーマン・ショック」並みの打撃を受ける可能性を否定し得ない。

「欧州ソブリン危機」深刻化に伴う世界的なマネーフロー逆流のリスク:今回のレポートでは、上記「(1)ギリシャのユーロ離脱などを受け『欧州ソブリン危機』が深刻化」に関連して、「欧州ソブリン危機」が深刻化する結果、世界的なマネーフローが逆流するリスクについて検証した。現在のグローバルなマネーフローは、「リーマン・ショック」前夜と非常に似通った特徴を有している。具体的に、今後、欧州の「ソブリン危機」深刻化に伴い警戒すべきは、(1)米長期金利の上昇、(2)我が国における長期金利上昇、(3)新興国株の下落、(4)ユーロ安、の4点であるといえよう。

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