日本経済見通し:グローバルな金融市場の混乱と日本経済

2011年度の経済見通しを上方修正する一方で、2012年度は下方修正

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2011年08月19日

  • リサーチ本部 副理事長 兼 専務取締役 リサーチ本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

サマリー

◆2011年度の経済見通しを上方修正する一方で、2012年度は下方修正:2011年4-6月期GDP一次速報を受け、2011-12年度の成長率見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2011年度が前年度比±0.0%(前回予想:同▲0.3%)、2012年度が同+2.6%(同:同+3.4%)である。2011年度の見通しは、サプライチェーンの想定以上の回復などを勘案し上方修正したが、2012年度に関しては、海外経済の下振れや円高の進行などを考慮し下方修正した(→詳細は、熊谷亮丸他「第170回日本経済予測(2011年8月18日付)」参照)。

◆グローバルな金融市場の混乱をどう捉えるか?:今回のレポートでは、グローバルな「金融危機」の歴史を検証することなどを通じて、足下のグローバルな金融市場の混乱について考察した。過去100年間程度の「金融危機」の歴史を検証すると「(1)金融危機→(2)財政危機→(3)インフレ圧力昂進」というパターンが抽出できる。最近のグローバルなリスク要因は、全て上記の枠組みの中で位置付けることが可能である。現状は、先進国ではデフレ懸念、新興国では先進国における過度な金融緩和の副作用などからインフレ懸念が燻るというきわめて不安定な構図になっている。今後の世界経済は、「金融危機」の第二ステップである、現状の「(2)財政危機」の段階から、米連銀による量的緩和政策第3弾(所謂“QE3”)の導入などを経て、「(3)インフレ圧力昂進」が懸念される状況へと向かうものと予想される。

◆日本経済の展望:今後の日本経済は、メインシナリオとして、2011年度下期以降、復興需要に支えられて回復軌道を辿る展開が予想される。リスク要因としては、(1)原発停止に伴う生産の低迷、(2)世界的な金融市場の混乱を受けた海外経済の下振れ、(3)円高の進行、などに留意が必要となろう。

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