サマリー
◆日本のデータ戦略は、Society 5.0の実現を目指し、サイバー空間とフィジカル空間を融合させた人間中心の社会を構築することを目的としている。2019年に、日本はDFFT(Data Free Flow with Trust)という信頼性のある自由なデータ流通のコンセプトを提唱した。さらに2023年のG7ではDFFTを推進する国際的な枠組みであるIAP(the Institutional Arrangement for Partnership)の設立が承認された。これにより、日本は国際的なデータ戦略での影響力を強めている。
◆IAPの設立承認により、日本は国際的なデータ流通で不利益を被らないよう、国際調和を図りつつ日本企業のニーズを国際ルールに反映することが求められる。これには国内のデータ流通と利活用の戦略が必須であるが、デジタル基盤の整備は緒に就いたばかりだ。日本は「域外に対してオープン」かつ「共存共栄型」のエコシステムを目指しているが、諸外国との差は大きい。
◆日本の目指すデータ利活用環境は、データ流通の信用・信頼において高い技術が求められる点でチャンスがある。これはDFFTの「T:Trust」としても重要視され、国内での検討成果を国際会議で示すことでDFFTの議論に貢献しつつ、基盤構築で諸外国に追いつく必要がある。国内企業や技術者を巻き込むことも重要だ。日本がデータ戦略の国際的議論でリーダーシップを維持するためには、国内のデジタル基盤とデータ利活用環境を早急に構築し、国内外のデータ戦略をバランスよく推進することが重要である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年6月日銀短観
業況判断DI(最近)は底堅いが、先行きへの強い警戒が示された内容
2025年07月01日
-
2025年5月鉱工業生産
生産用機械工業などの増産で上昇も市場予想を大幅に下回る結果
2025年06月30日
-
なぜ女性は理系分野を選択しないのか?
女性のSTEM人材不足の現状と教育段階におけるジェンダーギャップ
2025年06月27日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日