サマリー
◆DFFT(Data Free Flow with Trust)とは、「信頼性のある自由なデータ流通の促進を目指す」というコンセプトであり、2019年に日本により提唱された。「データは21世紀の石油」と表現される等、データは21世紀の経済成長やイノベーションの基盤となる重要なものである。そのデータを、どのように各国間で流通させたいのかを提示したこのコンセプトは、各国に受け入れられ、現在も実現に向けた議論が進められている。
◆DFFTの実現には、データローカライゼーション、規制協力、政府によるデータアクセス、優先分野のデータ共有という4つの大きな課題がある。これらの課題は、国家および公共の安全の維持や自国内の産業保護といった各国のデータ戦略が深く関わるため、一筋縄ではいかない。解決には、DFFTの「T」にあたる「Trust(信用・信頼)」をどのように実現するのかが鍵となる。
◆データは、物理的な形を持たず、プライバシーやセキュリティ面での厳格な対応が求められる等、従来の取引とは異なる特徴を持つ。そのため、従来の法的枠組み等では対応できない部分の「Trust(信用・信頼)」については、デジタル技術での補完が期待される。DFFTの実現には、デジタル技術がどこまで「Trust(信用・信頼)」に寄与できるかがポイントとなる。また、DFFTにおける「Trust(信用・信頼)」の構築に関する国際的な議論・合意形成の場となるIAP(the Institutional Arrangement for Partnership)の存在は、今後ますます大きなものになるだろう。
◆このように具体化に向けて動き出したDFFTにおいて、日本はその提唱国として、リーダーシップを維持・強化するための取り組みを積極的に行っている。これは、国際的なデータガバナンスにおける日本のプレゼンスを高めるほか、各国が重要視するデータ流通の国際ルールに対して、日本企業のニーズを反映させていくことにも繋がる。次回のレポートでは、このDFFTの実現およびIAPの設立に対する日本国内の取り組みや課題について取り上げる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
一億自己啓発社会の死角
データが示す、転職志向・子育て・ジェンダーにおける格差
2025年09月05日
-
2025年7月消費統計
需要側統計は強いが供給側は弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年09月05日
-
KDD 2025(AI国際会議)出張報告:複数AIの協働と専門ツール統合が新潮流に
「AIエージェント」「時系列分析」「信頼できるAI」に注目
2025年09月03日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日