サマリー
◆近年、日本の実質輸出や輸出数量指数の為替感応度はゼロ近傍まで低下した。円安が進行しても輸出量が増えにくくなり、非輸出企業への経済波及効果は2000年代までに比べて大幅に低下したとみられる。円安で輸出企業の業績が改善する半面、就業者数が多い非輸出企業では輸入インフレの悪影響が色濃く表れやすくなった。
◆企業経営の安定性を示す「損益分岐点比率」が為替変動でどのように変化するかを試算したところ、企業収益と就業者の双方に配慮した試算方法では1ドル130円台が最適となった。これは、幅広い企業が許容しやすい「適温」ともいうべき穏当な為替水準と考えられる。
◆他方、円高は企業収益の減少や株安などを通じてGDPを下押しすると考えられる。当社のマクロモデルを用いて推計すると、10円の円高ドル安がもたらす実質GDPの押し下げ幅は年間で0.2%程度とみられる。
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