不足するAI人材の育成は間に合うのか

日本におけるAI人材育成の取り組みとその課題

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2024年07月11日

サマリー

◆経済産業省が2019年に公表した調査によると、2030年にはAI人材が最大12.4万人不足すると予測される。この調査で不足が指摘されたAI人材とは、AIモデルの研究及び開発者、AIモデルを利活用した製品・サービスの企画開発等を行える人材を指し、いずれも高度な知識や技術力が求められる。

◆AI開発力において日本は海外企業に後れを取っている。この状況を打開するため、業界をリードできるAIモデルの研究及び開発者の育成・確保は急務である。その一環として、経済産業省が主催する「GENIAC」と呼ばれる生成AIの開発力強化に向けたプロジェクト等、既にある程度の知識や技術力を持つ人材への支援が開始されている。

◆継続的なAI人材確保のためには教育改革も重要となる。日本は諸外国と比較すると数学や科学的リテラシーは高いが、進路としてAI分野を選択する学生は多くない。文部科学省を中心に進めている「数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度」は、文理問わず、リテラシーレベルの向上及び実践的な知識や技術力を身につけることを目的としている。今後、AIモデルを利活用した製品・サービスの企画開発において、業界をリードする人材の育成に繋がることを期待したい。

◆また、AIモデルを利活用した製品・サービスの企画開発には、AIに関する技術力だけでなく、業界特有の知識や専門性が求められる。そのため、社会人へのリスキリング(以下、リスキル)・リカレント教育は効果的である。また、少子高齢化による労働力不足が懸念される日本において、AI自体が労働力不足を解消してくれる可能性を持つツールでもあり、事業継続の観点から企業における積極的なAI利活用が求められる。

◆日本における社会人の学び直しは、社内の人材育成、企業主体で行われるリスキルが中心である。しかし、日本ではAIの利活用に消極的な企業が多いこともあり、必要となる人材やスキルの整理ができておらず、結果、従業員への教育が十分にできていない。政府は「AI事業者ガイドライン」の策定等、AIを利活用する企業の助けとなる取り組みも行っている。今後は、これらを利用しながら、企業が積極的にAI利活用を行うことで、リスキル及び人材確保に繋げていくことが求められる。

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