サマリー
◆本レポートは、働き方改革関連法により導入された残業時間の上限規制の政策効果を検証した。この上限規制は一般的な労働者には適用される一方、管理職は適用対象外である点を踏まえて、同じ個人を複数年にわたって繰り返し観察したデータと計量モデルを利用して政策効果を推定した。
◆その結果、①残業時間の上限規制は総じて労働時間の減少や長時間労働の抑制などに効果があった、②男性の方が女性よりも明確な効果があった、③大企業では一定の残業時間を超える確率が広範に低下したのに対し、中小企業では女性が規制に抵触しない低めの残業時間を超える確率が高まった、などの示唆が得られた。
◆今後は、残業時間の上限規制が新たな問題を引き起こす可能性も議論すべきであろう。具体的には、規制の対象外である管理職への業務の集中や「名ばかり管理職」の増加、同じ仕事をより短い時間で終わらせるプレッシャーの増大、などが懸念される。単なる残業時間の短縮だけでなく、業務プロセスの改善や優先度の低い仕事の削減を含めた、生産性を高める真の働き方改革が求められる。
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