サマリー
◆本レポートは、働き方改革関連法により導入された残業時間の上限規制の政策効果を検証した。この上限規制は一般的な労働者には適用される一方、管理職は適用対象外である点を踏まえて、同じ個人を複数年にわたって繰り返し観察したデータと計量モデルを利用して政策効果を推定した。
◆その結果、①残業時間の上限規制は総じて労働時間の減少や長時間労働の抑制などに効果があった、②男性の方が女性よりも明確な効果があった、③大企業では一定の残業時間を超える確率が広範に低下したのに対し、中小企業では女性が規制に抵触しない低めの残業時間を超える確率が高まった、などの示唆が得られた。
◆今後は、残業時間の上限規制が新たな問題を引き起こす可能性も議論すべきであろう。具体的には、規制の対象外である管理職への業務の集中や「名ばかり管理職」の増加、同じ仕事をより短い時間で終わらせるプレッシャーの増大、などが懸念される。単なる残業時間の短縮だけでなく、業務プロセスの改善や優先度の低い仕事の削減を含めた、生産性を高める真の働き方改革が求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
2025年1-3月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率▲0.2%に改善するも民間在庫が主因
2025年06月09日
-
2025年4月消費統計
総じて見れば前月から概ね横ばい、先行きも横ばい圏で推移しよう
2025年06月06日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日