サマリー
◆本レポートは、働き方改革関連法により導入された残業時間の上限規制の政策効果を検証した。この上限規制は一般的な労働者には適用される一方、管理職は適用対象外である点を踏まえて、同じ個人を複数年にわたって繰り返し観察したデータと計量モデルを利用して政策効果を推定した。
◆その結果、①残業時間の上限規制は総じて労働時間の減少や長時間労働の抑制などに効果があった、②男性の方が女性よりも明確な効果があった、③大企業では一定の残業時間を超える確率が広範に低下したのに対し、中小企業では女性が規制に抵触しない低めの残業時間を超える確率が高まった、などの示唆が得られた。
◆今後は、残業時間の上限規制が新たな問題を引き起こす可能性も議論すべきであろう。具体的には、規制の対象外である管理職への業務の集中や「名ばかり管理職」の増加、同じ仕事をより短い時間で終わらせるプレッシャーの増大、などが懸念される。単なる残業時間の短縮だけでなく、業務プロセスの改善や優先度の低い仕事の削減を含めた、生産性を高める真の働き方改革が求められる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年10月貿易統計
トランプ関税の悪影響が継続。今後は米中リスクにも警戒が必要
2025年11月21日
-
2025年10月全国消費者物価
サービス価格や耐久消費財価格の上昇が物価上昇率を押し上げ
2025年11月21日
-
中国の渡航自粛要請は日本の実質GDPを0.1~0.4%下押し
今後は対中輸出などへの波及に要注意
2025年11月21日

