2020年6月日銀短観

新型コロナで業況は大幅悪化/先行きは大企業と中小企業で明暗分かれる

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2020年07月01日

  • 山口 茜

サマリー

◆6月短観では、大企業製造業の業況判断DI(最近)は▲34%pt(前回差▲26%pt)、大企業非製造業の業況判断DI(最近)は▲17%pt(同▲25%pt)と、いずれもリーマン・ショック以来の水準へと悪化した。前回調査後、新型コロナウイルスの影響が深刻化して売上が落ち込み、業況判断を悪化させた。これに伴い、売上高・経常利益計画は大幅に下方修正された。

◆足元では国内外ともに経済活動が再開され、景気は緩やかな回復基調に転じていることから、業況判断DI(先行き)は、大企業製造業が▲27%pt(今回差+7%pt)、大企業非製造業が▲14%pt(同+3%pt)といずれも改善が見込まれている。ただし、引き続き一定の感染拡大防止策が実施されていることや、感染第2波への懸念が強いことから上昇幅は小幅に留まっている。さらに、中小企業では先行きも悪化が見込まれており、企業の慎重な見方がうかがえる。

◆2020年度の設備投資計画(全規模全産業、含む土地、ソフトウェアと研究開発投資額は含まない)は前年度比▲0.8%へと小幅に下方修正された。通常、6月日銀短観では、中小企業を中心に上方修正されるという統計上のクセがある。しかしながら、新型コロナウイルスの影響を踏まえて設備投資計画の見直しが広がったことで、リーマン・ショック後以来の下方修正となった。設備判断DIを見ると過剰感の強まりが確認されていることから、今後、コロナ禍の影響を見定めながら、下方修正される公算が大きい。

◆雇用人員判断DIも製造業・非製造業ともに大幅に悪化しており、大企業製造業では2014年6月以来の過剰超過となった。足元では雇用調整助成金の拡充などの政策効果もあり、失業率の大幅な上昇は起きていないものの、依然として休業者は多く存在する。今後、業績の回復が鈍い中で人員整理が行われ、失業者が増加することが懸念される。

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