サマリー
◆2019年10-12月期の実質GDP成長率(二次速報)は前期比年率▲7.1%(前期比▲1.8%)と、一次速報(前期比年率▲6.3%、前期比▲1.6%)から下方修正され、市場予想(前期比年率▲6.6%、前期比▲1.7%)を下回った。
◆下方修正に寄与した要因は、法人企業統計の結果を受けた民間企業設備(前期比▲3.7%→同▲4.6%)、および民間在庫変動(前期比寄与度+0.1%pt→同+0.0%pt)だ。前者に関してはとりわけ輸送用機械(前期比▲10.4%)、その他の機械設備等(同▲4.2%)が大きい。
◆10-12月期の大幅マイナス成長の主因は、消費増税に伴う駆け込み需要の反動減および負の所得効果に求められる。従って先行きを考えると、少なくとも前者の効果は逓減に向かう公算が大きい。しかし2020年を見通すと、新型肺炎という新たな問題が深刻度を増している。
◆新型肺炎は中国を中心としたサプライチェーンの寸断という経路のみならず、日本を含めた世界各国のパニックおよび自粛を受けた需要減退という経路をも通じて景気低迷を現実化させている。蔓延収束後に前者はペントアップデマンドを生じさせる可能性を有しているが、後者はサービス消費を中心として、失われた需要を取り戻すことが難しい。また、企業収益の悪化が雇用者報酬の抑制を通じて、最終需要を追加的に低迷させる可能性も高まっている。そして当然、収束に時間を要するほど打撃は累増する。日本経済の成長軌道が中期的に低迷に向かう公算は拡大しているとみざるを得ない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
「駆け込み需要」の徹底検証(業種別・品目別)
対策のエアポケットとなった分野で顕著に発生。今後は反動に要警戒。
2019年10月30日
-
徹底検証:消費増税と対策の影響分析
所得効果・代替効果と世代別影響・産業別影響を網羅的に精査
2019年09月18日
同じカテゴリの最新レポート
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
-
2025年7-9月期GDP(2次速報)
設備投資などが減少し、実質GDPは前期比年率▲2.3%に下方修正
2025年12月08日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

