サマリー
◆罰則付きの残業規制の対象となり得る月間就業時間260時間超の雇用者(以下、「長時間労働者」)は2018年度で189万人と、5年前の240万人から男性を中心に減少した。企業は雇用を増やしつつ、正規間、または正規・非正規間での業務分担の見直しや、生産性向上による労働時間の抑制を通じて長時間労働者を減少させたとみられる。
◆産業別に見ると、長時間労働者数は2013年度から2018年度にかけてほぼ全ての産業で減少した。「卸売業,小売業」や「宿泊業,飲食サービス業」では長時間労働者の業務の一部を主にパート・アルバイトが分担する一方、「製造業」や「建設業」、「運輸業,郵便業」では正社員を増やしつつ、業務分担の見直しを主に正社員間で行うことで長時間労働者数を減らしてきたと思われる。
◆就業者数の減少が長期に見込まれる中、これまでのように雇用増に頼った長時間労働の削減はいずれ難しくなる。労働生産性の向上を通じて必要とされる労働の総量を減らすことはもちろんのこと、特定の従業員に業務が過度に集中しないように従業員間の業務分担を見直したり、既存の従業員の意欲や能力を高めたりする取り組みが、企業にとってより肝要になるだろう。また、今回の残業規制がどこまで実効的に機能するのかについて注視していく必要がある。
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