サマリー
◆経済や金融の分野では、伝統的に政府統計や企業決算のほか、株価・債券価格、為替レートなどのマーケットデータなどが分析されてきた。しかし、近年では、情報技術の発展を背景とした膨大なデータの蓄積やクラウドコンピューティング環境の普及等を背景に、これらのデータに加え、非伝統的なオルタナティブ(代替)データを活用したビッグデータ分析が盛り上がりつつある。
◆本レポートでは、オルタナティブデータの中でも、各電力会社のウェブサイト上で公表されている電力需要量のデータを活用した。そして、状態空間モデルと呼ばれる計量モデルを用いてトレンドを抽出し、これと経済指標との関係性を確認することを通じて、日本経済全体や地域経済の早期把握を試みた。
◆電力需要量は気温など様々な要素から影響を受けるため、そのままでは経済活動との関係性を見出すことは難しい。そこで、電力需要量全体を景気との関連が期待されるトレンド部分と、気温効果などのそれ以外の部分に分解できると仮定した状態空間モデルを構築した。さらにこのモデルでは地域レベルの階層構造を持つものとした。すなわち、全9地域それぞれのデータを活用することで精度を上げつつ、地域ごとの特性を考慮したモデルとなっている。
◆分析結果を見ると、全国および多くの地域別のデータでは経済指標(日銀短観)と(強い)正の相関が確認でき、とりわけ深夜の時間帯のデータを用いた場合のパフォーマンスが高かった。そして、最もパフォーマンスが高かったモデルを用いて、2019年7月末までの電力需要量のトレンドの動きから算出すると、足元で日本全国、および一部の地方で経済の減速にいったん歯止めがかかった可能性が示唆される。
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