サマリー
米FRBの近い将来の利下げがコンセンサス化する中、ECBも政策金利の据え置き期間の長期化のみならず、緩和の再開を匂わせ始めた。当面、世界は金融緩和競争的な様相を呈する可能性が高まっている。ECBがあたかもFRBに追随するようにスタンスを変えてきたことが示すように、緩和は他国・地域に波及しやすい。金融緩和は当該国の通貨を下落させる要因であり、他国・地域はそれに乗り遅れることで自国通貨が上昇することを避けようとするためである。グローバルで見れば為替レートはゼロサムだが、緩和競争が広がりを見せれば、一定の世界景気の下支え効果が期待できる。ただし、緩和競争がどの程度の広がりを見せるかは、新興国の余裕度次第の面がある。米欧の金融緩和は新興国にも追随しやすい環境をもたらすが、その効果を超えて世界的な景況感が悪化すれば、リスク・オフ的な新興国売りが発生し、むしろ新興国は通貨防衛を迫られる可能性があるからだ。当たり前ではあるが、金融緩和の効力は、あくまで景況感との力関係で決まる相対的なものにすぎない。さしあたっては、G20サミットに向けて、米中摩擦の深刻化が回避されるかが最大の注目点ということになろう。
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