サマリー
米FRBの近い将来の利下げがコンセンサス化する中、ECBも政策金利の据え置き期間の長期化のみならず、緩和の再開を匂わせ始めた。当面、世界は金融緩和競争的な様相を呈する可能性が高まっている。ECBがあたかもFRBに追随するようにスタンスを変えてきたことが示すように、緩和は他国・地域に波及しやすい。金融緩和は当該国の通貨を下落させる要因であり、他国・地域はそれに乗り遅れることで自国通貨が上昇することを避けようとするためである。グローバルで見れば為替レートはゼロサムだが、緩和競争が広がりを見せれば、一定の世界景気の下支え効果が期待できる。ただし、緩和競争がどの程度の広がりを見せるかは、新興国の余裕度次第の面がある。米欧の金融緩和は新興国にも追随しやすい環境をもたらすが、その効果を超えて世界的な景況感が悪化すれば、リスク・オフ的な新興国売りが発生し、むしろ新興国は通貨防衛を迫られる可能性があるからだ。当たり前ではあるが、金融緩和の効力は、あくまで景況感との力関係で決まる相対的なものにすぎない。さしあたっては、G20サミットに向けて、米中摩擦の深刻化が回避されるかが最大の注目点ということになろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
日本経済見通し:2019年6月
外需成長なくして内需回復なし
2019年06月20日
-
米国経済見通し FOMCは利下げ可能性を示唆
マーケット参加者は利下げへの確信を強めるも過信は禁物か
2019年06月21日
-
欧州経済見通し 長期化する不透明感
ドラギECB総裁は金融緩和再開の可能性を示唆
2019年06月21日
-
予断を許さない米中摩擦と減速する中国経済
内需テコ入れ、未だ本気モードに非ず
2019年06月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4月全国消費者物価
エネルギー高対策の補助縮小や食料価格高騰が物価を押し上げ
2025年05月23日
-
AI時代の日本の人的資本形成(個人編)
AI時代を生き抜くキャリア自律に向けた戦略
2025年05月22日
-
2025年3月機械受注
民需(船電除く)は事前予想に反して2カ月連続で増加
2025年05月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日