サマリー
◆2018年7-9月期の全産業(金融業、保険業除く)の売上高は前年比+6.0%、経常利益は同+2.2%と増収増益を維持したものの、前期から大幅に鈍化した。一方、季節調整値で見た経常利益も、前期比▲14.3%と3四半期ぶりに落ち込んだ。最高益となった前期を除くと、2017年以降、概ね横ばいで推移している。
◆2018年7-9月期の全産業(金融業、保険業除く)の設備投資(ソフトウェア除く)は前年比+2.5%と8四半期連続で増加したものの、4-6月期(同+14.0%)から大幅に鈍化した。季節調整値で見ても、前期比▲4.0%と5四半期ぶりに減少した。
◆もっとも7-9月期は、4-6月期に強い伸びを記録したことの反動や、相次いだ自然災害が企業活動を制約した影響を色濃く反映したものとみられる。従って、10月以降は、その反動が出てこよう。一方で、世界経済の不確実性は着実に高まっている。米中の通商摩擦の影響は、これから本格的に顕在化すると考えられ、先行きの不透明さを懸念する企業の声も多い。従って、企業の積極的な投資意欲にも影を落とす可能性があり、企業マインドを示す、12月の日銀短観の設備投資計画の内容が注目される。
◆先行きの設備投資は、緩やかながらも増加基調を継続するだろう。高水準の企業収益と労働需給の引き締まりを背景として、人手不足に対応した省人化投資やIT投資が期待されよう。また、競争力・収益性を維持するために、設備の更新や研究開発投資も欠かせない。しかし、企業の期待成長が高まらない中では、設備投資の水準は、キャッシュフローを大きく下回り、減価償却費を一定程度上回るレベルに留まる傾向が続くだろう。さらに、資本ストック循環などを見ると、景気は成熟局面に位置しており、中期的には、設備投資の伸びは徐々に鈍化するとみられる。
◆今回の法人企業統計の結果を受けて、2018年7-9月期GDP二次速報(12月10日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率▲1.8%と、2四半期ぶりのマイナス成長となった一次速報(同▲1.2%)から下方修正されると予想する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
トランプ関税の影響緩和に作用した企業対応
自動車は関税負担吸収で他企業への波及回避/機械は価格転嫁
2025年12月19日
-
2025年11月全国消費者物価
エネルギー価格の伸び率拡大を食料品価格などの伸び率鈍化が相殺
2025年12月19日
-
高市政権の財政政策は更なる円安を招くのか
財政支出の拡大ショックは翌年の円安に繋がる
2025年12月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

