サマリー
6月上旬に行われたG7首脳会議では米国の輸入関税をはじめとする保護主義姿勢を巡る米国とEU・カナダとの亀裂が鮮明となり、ついにはトランプ大統領が首脳宣言を反故にするという異常な事態に発展した。トランプ政策のナンセンスはいつものことながら、より懸念されるのは、EU、カナダが早々に報復関税発動の方針を発表したことで、国際社会が米国のナンセンスな政策を押しとどめる抑止力を失ったことであろう。特に米国に匹敵する巨大経済圏であるEUが米国の身勝手にまともに向き合い、国際協調路線を放棄したかにみえることは、今後の世界経済への大きな懸念材料である。国際社会が無策である以上、貿易摩擦の深刻化を回避する上で期待されるのは、米国の企業、国民の声ということになろうか。実際、追加関税の対象から日用品、テレビ等の耐久財が除かれたのは、米国内での反発を受けた結果であると報道されている。しかし、こうしたドメスティックな抑止力が、品目間調整を超えてトランプ大統領の保護主義姿勢を転換させるには、自動車の輸入関税の大幅上乗せが、米国民の実質購買力を大きく毀損するなど、大きな経済的ダメージが生じるプロセスを必要とするかもしれない。グローバルガバナンスの不在のコストが世界経済に重くのしかかりつつあるようにみえる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
欧州経済見通し ECBは量的緩和停止を予告
景気とインフレ見通しの不透明感を高める貿易摩擦
2018年06月21日
-
日本経済見通し:2018年6月
Ⅰ.米中関税合戦は延長戦入り、日本経済・企業収益はどうなる? Ⅱ.消費増税の影響を巡る過少推計レトリックと論点整理 Ⅲ.経済見通しを改訂:2018年度+1.0%、2019年度+0.8%
2018年06月20日
-
中国:影の銀行の過度の抑制もリスク要因に
米中摩擦の本質はハイテク覇権争い
2018年06月20日
-
米国経済見通し 貿易戦争が本格化
中国への500億ドル規模の関税を決定、さらなる追加関税も示唆
2018年06月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
2025年12月日銀短観予想
輸出不振や原材料高で製造業の業況判断DI(最近)は悪化を見込む
2025年12月10日
-
2025年7-9月期GDP(2次速報)
設備投資などが減少し、実質GDPは前期比年率▲2.3%に下方修正
2025年12月08日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

