サマリー
◆3月の完全失業率(季節調整値)は、前月から横ばいの2.5%となった。男女ともに就業者は大幅に増加した。年初から新たな労働参加の動きが強く、内容としては良好だ。ただし、男性の就業者増加の主因は2月に続き自営業主・家族従業者の大幅な増加であり、一時的なぶれにすぎない可能性がある。他方、2月の有効求人倍率(同)は、前月から0.01pt上昇し1.59倍、新規求人倍率(同)は前月から0.11pt上昇し2.41倍となった。また、正社員の有効求人倍率(同)は前月から0.01pt上昇し1.08倍となった。
◆人手不足は、特に「建設躯体工事」や「保安」の職業において深刻だ。有効求人倍率は高水準にあり、人手不足の進展度合いも他の職業に比べて大きい。その背景には、就業者の大半が男性であるという職業の特性も影響しているとみられ、今後も深刻な人手不足は続くだろう。こうした人手不足に対応し、警備大手・流通大手では、商業施設の保守や警備の人員を半減できる管理・警備業務の受注を始めるといった動きも見られる。
◆2月の現金給与総額は前年比+1.0%と7ヶ月連続で増加した。内訳を見ると、所定内給与(同+0.6%)、所定外給与(同+0.4%)、特別給与(同+25.7%)の全ての項目で増加した。特に一般労働者の所定内給与の増加(同+0.8%)が全体を押し上げた。
◆先行きの労働需給はタイトな状況が続き、失業率は上下しながらも2%台半ばで推移するとみている。失業率は1980年に1%台を記録しているが、今後その水準まで低下するには、職種に関するミスマッチの解消が必要だ。また、2019年度以降導入予定の残業規制等を背景に、企業の人手不足感は一層強まるとみている。特に人手不足が深刻な産業では、正社員化や賃金引上げといった処遇の改善や省人化投資が必要だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
消費データブック(2025/5/2号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2025年05月02日
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
-
2025年3月鉱工業生産
自動車工業や電気・情報通信機械工業など10業種が前月から低下
2025年04月30日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日