サマリー
◆2017年6月の企業関連の指標を見ると、鉱工業生産指数は、前月比+2.2%と2ヶ月ぶりの上昇となった。一方で、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、同▲1.9%と3ヶ月連続で減少した。需要者別に受注を見ると、製造業は同▲5.4%と5ヶ月ぶりに減少した。輸出拡大に伴う稼働率の上昇を受けて、受注動向は緩やかな増加が続いてきたものの、一服感が見られる。非製造業(船舶・電力を除く)は同+0.8%と4ヶ月ぶりに増加した。内閣府が新たに公表した7-9月期見通しは、非製造業が大幅なプラスになると見込んでいる。
◆2017年6月の家計調査によると、実質消費支出は季節調整済み前月比+1.5%と3ヶ月連続で増加した。実質消費支出は、均してみれば回復の兆しが見られる。また、完全失業率(季節調整値)は前月から0.3%pt低下し2.8%、有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.02pt上昇し1.51倍となった。先行きの労働需給は、非製造業を中心とする高い労働需要を背景に、タイトな状況が続く見通しである。ただし、ほぼ完全雇用状態に達しているため、就業者数の増加ペースは緩やかなものにとどまるとみている。
◆今後発表される経済指標では、9月1日発表予定の4-6月期法人企業統計に注目したい。4-6月期の生産は増産基調が維持されており、売上高の押し上げ要因になるとみている。一方で、気がかりな点も存在する。輸出関連製造業では、2017年に入ってから円高方向に振れたことが、ラグを伴って重石になろう。また、非製造業では、人件費などの投入コストの上昇を背景に経常利益の頭打ち感が強まる見込みだ。経常利益は高水準を維持する可能性が高いものの、プラス要因とマイナス要因が交錯する中で、3期連続で過去最高を更新するか否かが注目される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
-
財政悪化が日本経済にもたらす影響とリスクの定量評価
成長力強化と財政健全化で将来の財政危機発生リスクの抑制を
2025年10月07日
-
日本財政の論点 – PB赤字と政府債務対GDP比低下両立の持続性
インフレ状態への移行に伴う一時的な両立であり、その持続性は低い
2025年10月06日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日