サマリー
FRBによれば、昨年11月の米国大統領選挙から同年末にかけて、米ドルの名目実効レートは5%弱上昇し、後、4月中旬までに4%程度下落した。3月半ばに2.6%台だった米国10年国債利回りは2.2%前後に低下している。司法や議会の壁に直面するトランプ政策が迷走し、実効的な景気刺激策に対する期待が後退している結果であろうが、これ自体は必ずしも悪いことではない。第一に、経済合理性に真っ向から反する政策が繰り出される可能性は低下している。米国が中国の為替操作国認定を見送ったことなどは、その一例と捉えられよう。第二に、米国はそもそも景気刺激策を必要とする状況にはない。同国の景気が万全ということではないが、循環的には完全雇用近傍のマチュアな状況にあり、追加的な刺激策が賃金上昇の加速などを惹起する可能性がある。これとも関係するが、第三に期待先行のドル高や金利上昇が収束することで、米国景気拡大の延命の可能性が高まる。もっとも、いいことばかりではない。市場のメッセージはやや込み入っており、政権の政策執行能力への疑念が高まっている割には、米国株価の反落の程度は明らかに軽微である。恐らく注意すべきは、株価調整の本格化よりも、分配の不平等が一層深刻化し、トランプ政権の求心力が消失する可能性があることであろう。それが同政権のレームダック化を招くだけであれば良いが、内政の失策を高圧的な外交政策で相殺するべく、地政学的リスクをあちらこちらで撒き散らせば、上記の「加点」はすべで霧散する。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
中国:2期連続の成長加速、年後半に息切れも
2017年1月~3月は実質6.9%成長
2017年04月20日
-
欧州経済見通し 引き続き政治が不透明要因
英国は6月8日に下院議会選挙を前倒し実施へ
2017年04月20日
-
米国経済見通し 高まる下方修正リスク
税制改革は後ずれの公算が大きく、野心的な改革も困難
2017年04月20日
-
日本経済見通し:日本経済再生にとって今なぜ働き方改革が重要か?
長時間労働の是正は生産性の向上を伴うことが重要
2017年04月20日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4月全国消費者物価
エネルギー高対策の補助縮小や食料価格高騰が物価を押し上げ
2025年05月23日
-
AI時代の日本の人的資本形成(個人編)
AI時代を生き抜くキャリア自律に向けた戦略
2025年05月22日
-
2025年3月機械受注
民需(船電除く)は事前予想に反して2カ月連続で増加
2025年05月22日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日