全国で問題視される「空き家」の存在
~貸家バブルを中心に考える~『大和総研調査季報』 2016年秋季号(Vol.24)掲載
2016年12月01日
サマリー
消費税増税後、日本の個人消費全体が伸び悩んでいる中、住宅投資は堅調である。特に貸家の建設は、首都圏や近畿圏だけでなく、その他の地域でも増えている。大幅増の背景には、相続税対策や金利低下など供給サイドの要因が専ら働いているとみられるが、首都圏の賃貸物件の成約件数が頭打ちになっているように、必ずしも需要とマッチしているとはいえない。
貸家ブームの行方に慎重にならざるを得ない一方、住宅ストックの観点からは、地方の過疎地域だけでなく、都市部でも空き家問題が顕在化している。
空き家の過半数を占める賃貸用に注目すると、その空き家率は約2割に達する。賃貸用の空き家の約3割が集まる関東大都市圏の空き家率は全般的に低いが、ここ10 年間の上昇幅は全国を上回ってきた。建築時期が不明な空き家も多く、容易に住宅として使用できる物件は限られ、実質的な空き家率は喧伝されるほど高くないかもしれない。だが、足元の貸家の超過供給の状況を踏まえると、空き家自体は今後も増えていくと予想される。地方などの空き家を改築・改装して再利用を図ることは、外国人旅行者を地方に呼び込むという目的とも合致し、有効利用の一つのアイデアといえよう。
大和総研 調査本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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