サマリー
2015年の日本経済は、好循環の歯車が狂い始め、「踊り場」局面入りすることとなった。今後、日本経済の好循環を再起動させるためには、労働者の「賃金」の動向が重要なカギを握る。本稿では、アベノミクス下で見られる賃金の特徴と今後の課題について分析した。
アベノミクス第1ステージでは、雇用者の増加を主因に名目雇用者所得が増加基調に転じた一方、実質雇用者所得は消費者物価の上昇により減少傾向が続いた。つまり、物価の伸びを明確に上回るような名目雇用者所得の上昇が実現できていないという点に課題が残された。
政府の「賃上げ」に向けた強い働きかけや、経済界、労働界および政府の会合などの効果により、「労働者」の賃金を引き上げる動きが広がりつつある。他方、「マクロ経済スライド」という制度的な逆風下で、「年金受給者」の多くは、景気回復の恩恵をほとんど実感できていないとみられる。
グローバルに見ても「労働生産性の向上なくして、持続的な賃金上昇なし」と言える。今後の課題は、労働生産性の向上に努める中で、それに伴う収益の増加が適切に労働者に分配され、明確な賃金上昇を実現することである。

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
- 
                
                
                
                    2025年9月雇用統計 失業率は前月から横ばいも、労働参加と就業拡大が進展 2025年10月31日 
- 
                
                
                
                    2025年7-9月期GDP(1次速報)予測~前期比年率▲2.8%を予想 トランプ関税や前期からの反動減で6四半期ぶりのマイナス成長か 2025年10月31日 
- 
                
                
                
                    2025年9月全国消費者物価 政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる 2025年10月24日 
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
                                
                                    
                                      - 
                                              
                                          第226回日本経済予測(改訂版) 低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証 2025年09月08日 
- 
                                              
                                          聖域なきスタンダード市場改革議論 上場維持基準などの見直しにも言及 2025年09月22日 
- 
                                              
                                          今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは 金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表 2025年09月01日 
- 
                                              
                                          日本経済見通し:2025年9月 トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は? 2025年09月25日 
- 
                                              
                                          中国:2025年と今後10年の長期経済見通し 25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題 2025年01月23日 
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日





