世界貿易の停滞
~循環的要因か、構造的要因か~『大和総研調査季報』 2015年秋季号(Vol.20)掲載
2015年12月01日
サマリー
2008年の世界金融危機後、世界貿易は一時的にV字型の回復を見せたが、その後、2011年から現在にかけて伸び率は鈍化し、危機前の勢いを欠いている。その背景を探るため、世界金融危機の前後に分けて輸入数量関数の推計を行った。その結果、2011年以降、ほぼ全ての主要国/地域において長期輸入弾性値が低下していた。
世界的に貿易と経済成長との関係が弱くなったのは、循環的要因あるいは構造的要因によるものか。それを考察するため、グローバル・バリュー・チェーンの影響、世界経済の需要構成の変化、さらに主要国における緊縮財政と中国経済の減速の影響など、様々な角度から検討した。
結論として、弾性値の低下は循環的要因によるものとは必ずしも言えず、構造的な要因も重なった複合的なものである。長期停滞の様相を呈してきた世界経済にとって、世界貿易の停滞は先行きへの不確実性を高め、金融政策に依存せざるを得ない主要国の政策当局に難しいかじ取りを迫っている。
大和総研 調査本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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