サマリー
◆米国の利上げに伴う世界経済への悪影響が懸念されている。一方でECBの量的緩和による世界経済に対する下支え効果に期待がかかる。本稿では、米国の利上げと欧州の量的緩和が世界経済および日本経済に与える影響について分析する。
◆当社のマクロモデルによる試算結果によれば、世界経済に与える影響はFEDの利上げによるマイナスの効果がECBの量的緩和によるプラスの効果を凌駕する。ただしFEDがあくまで米国の景気に中立的なペースで利上げを行う限り、過度の懸念は禁物である。また、新興国のバランスシート改善に伴い、通貨危機のリスクも低減している。
◆日本経済への影響も同様に、FEDが利上げに向かう中では減速を免れない。しかし米国の利上げが景気に中立的なペースにとどまる限り、その悪影響は極めて限定的である。また、新興国の「テールリスク」を懸念すべき状況にないため、「リスクオフ」進行に伴う大幅な円高や景気の大崩れが発生する可能性は限定的だ。米国の利上げは「有事の円高」ではなく、日米金利差の拡大を素直に反映したドル高・円安を招く可能性が高い。
◆最大のテールリスクは、米国の利上げに伴う中国の「バブル」崩壊シナリオである。現在行われている中国の金融緩和は一定の景気下支え効果を有するものの、本質的な問題解決が先送りされる結果、将来的な調整余地を増幅することになりかねない。中国経済の「テールリスク」は温存されることになるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年9月雇用統計
失業率は前月から横ばいも、労働参加と就業拡大が進展
2025年10月31日
-
2025年7-9月期GDP(1次速報)予測~前期比年率▲2.8%を予想
トランプ関税や前期からの反動減で6四半期ぶりのマイナス成長か
2025年10月31日
-
2025年9月全国消費者物価
政策要因でコアCPI上昇率拡大も物価の上昇基調には弱さが見られる
2025年10月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日

