サマリー
◆有効求人倍率が1倍を上回る水準で推移していることにも表れているように、企業では人材確保が困難となり、機会損失の発生や人件費の増加など、人手不足による悪影響が問題となりつつある。本稿では、今回の景気拡大局面(2012年12月~)の動向を中心に、雇用を取り巻く環境を確認し、労働需給の先行きを展望する。また、その上で労働供給不足が経済成長のボトルネックとなる可能性について検討する。
◆足下での就業者数の増加は景気拡大に沿ったものであるが、景気拡大ペースに比べて就業者の増加ペースが速いことが今回の景気拡大局面における特徴である。最大の要因は、今回の景気拡大が個人消費に牽引されてきたということ。労働集約的な小売業やサービス業などの労働需要が高まることで、非製造業の就業者数が大幅に増加してきた。
◆労働需要が高まるのと同時に、女性を中心に労働力率が上昇し、労働力人口が増加に転じたことも今回の景気拡大局面における特徴である。労働力率が上昇したのは、労働需給がひっ迫する中で、賃金を始めとする就労条件の改善が進んだためとみられる。
◆先行きについては、景気拡大が続くことで就業者数の増加基調が続く可能性が高い。ただし、今後は製造業中心の景気拡大が見込まれることから、就業者数の増加速度はこれまでと比べると幾分緩やかなものになろう。一方、労働供給については、人口減少のトレンドが下押し要因となり続ける見込みであるが、賃金上昇を背景に労働力率の上昇が続くことで、労働力人口は概ね横ばい圏で推移するとみられる。失業率は低下傾向が続くとみられるものの、その速度はごく緩やかなものに留まり、構造失業率を上回る水準で推移する見込みである。労働力不足が経済成長の決定的なボトルネックとはならないだろう。
◆しかし、こうした展望は労働需給のひっ迫が賃金上昇や雇用者の待遇改善につながり、それに伴い新たに就労を希望する者が増加する(=労働力率が上昇する)という前提に基づいたものである。マクロモデルを用いた試算によれば、上記のメカニズムがうまく働かなかった場合、実質GDPは2015年度に3.4兆円、2016年度に7.2兆円程度下押しされる可能性がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
Fable 5の提供再開が示すAI規制の限界
個別モデルの規制から普及を前提としたルール形成へ
2026年07月03日
-
約40年ぶりの円安ドル高、日本経済への影響は?
円安の恩恵は偏在し、直近1年間の実質GDPへの影響は▲0.14%
2026年07月03日
-
消費データブック(2026/7/3号)
個社データ・業界統計・JCB消費NOWから消費動向を先取り
2026年07月03日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
-
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
-
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
-
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
中国経済見通し:泥沼化する不動産不況
低迷する内需。財政出動・さらなる金融緩和への期待が高まる
2026年06月22日
ナフサ問題がもたらす日本経済の不安要素
物価上昇は避けられず、供給不足が生じればさらなる経済下押しも
2026年06月15日
第229回日本経済予測(改訂版)
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年06月08日
「成長投資ガイダンス」の解釈とその活用法
資本コストを上回る資本収益性の確保は価値創造(EP)の前提条件
2026年06月17日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日

