サマリー
日本経済においては、1990年代後半以降、賃金の低迷が続いている。
実質賃金の低迷には、企業の収益性が消費者物価との対比で低下し続けたことが大きく影響している。名目賃金の低迷は、後払い的な要素のある賃金決定慣行と、賃金上昇を販売価格に転嫁しにくいと考える日本の企業風土が影響している。
実質賃金の低下は、個人消費を中心とする実体経済低迷の要因となり、名目賃金の低下はデフレスパイラルを招くことになった。個人消費の増加に向けた賃金上昇のためには、実質賃金の増加を目指すべきだ。一方、名目賃金の上昇に向けては、企業が先陣を切って賃金を上昇させていくような姿勢が必要である。
2014年4月には、一部の企業でベースアップが行われる見込みであり、賃金上昇に向けてよい兆しが見え始めている。こうした動きが継続的に行われるためには、企業のみならず、政治や家計にも一定の役割が求められている。「失われた20 年」から脱却するためにも、今こそ社会構造の変革を起こさねばならない。

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