サマリー
◆安倍政権による後押しもあり、賃上げの議論が高まっている。経団連が6年ぶりのベアを容認するといった動きもみられるが、最終的な賃上げ動向は個別企業の判断に委ねられることになる。今後の賃上げ動向を見通すため、賃金上昇を取り巻く各産業の環境を概観する。
◆アンケート調査によると、企業が賃上げに際して最も重視しているのは、圧倒的に企業収益動向である。ただし、過去の関係性においては、企業収益実績が影響を及ぼすのは一時金であり、今回注目されている基本給については、収益動向ではなく、労働需給との関係性が強い。
◆足下で利益が大幅に改善している製造業では、賃金が上昇する可能性が高く、ベースアップについてもある程度は期待が持てるだろう。しかし、製造業の多くでは雇用の過剰感はさほど高まっておらず、追加的な労働力を確保する必要性は低いことから、ベースアップについては収益の改善が著しい一部の企業に留まり、全体としては一時金での対応となる可能性が高い。
◆一方、非製造業では足下までの収益の改善が総じて小幅であることに加え、消費税増税を控え、先行きについても不透明感が強いことから、当面、賃上げには慎重にならざるを得ない。ただし、非製造業は製造業に比べて労働需給がタイトであり、追加的に労働力を確保する必要性が高いことから、賃金上昇圧力が強いものと考えられる。また、非製造業では賃上げによる自部門への恩恵が大きいこともあり、収益の改善が続けば、ベースアップの動きは広がりやすいと言えよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
-
財政悪化が日本経済にもたらす影響とリスクの定量評価
成長力強化と財政健全化で将来の財政危機発生リスクの抑制を
2025年10月07日
-
日本財政の論点 – PB赤字と政府債務対GDP比低下両立の持続性
インフレ状態への移行に伴う一時的な両立であり、その持続性は低い
2025年10月06日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日