サマリー
◆8月12日に公表された2013年4-6月期GDP一次速報は前期比+2.6%と3四半期連続のプラス成長となった。国内経済が極めて堅調に推移していると判断できる結果であったと言えよう。
◆消費税増税1年前の経済が強いことだけで消費税増税の環境が整ったと判断すると、1997年4月の消費税増税も正当化されることになる。しかし、1997年には様々な外部環境悪化の影響から、経済は大きく落ち込むこととなった。消費税増税が景気後退の主因であったとは言い難いものの、外部環境が悪い中での増税は避けるべきであるというのが、過去の教訓であろう。
◆そこで、注意深く国内環境を点検すると、1997年の消費税増税時と今は大きく異なることがわかる。1997年の景気悪化は、①アジア通貨危機の発生、②国内金融システム不安、③政策対応の失敗という三つの要素が複合的に引き起こしたものである。
◆現在、一部の新興国では為替が減価し、利上げを余儀なくされるなど、資金流出の影響が生じ始めているものの、通貨危機の再来は考えにくい。国内の金融機関の財務状況も健全であり、日本発の金融危機が国内経済を下押しする可能性はほぼゼロに等しい。さらに、今回の増税に際しては、過去の経験を教訓に適切な政策対応が打たれる可能性が高い。中国や中東など、海外経済の動向はリスクとして注視が必要であるものの、現在、日本発で国内景気に大きな影響を与える危機が発生する可能性は低いだろう。
◆以上を総括して考えれば、今回は1997年とは異なり、消費税増税を受けて景気が急減速するシナリオは避けられる見通しである。もちろん、消費税率の引き上げが消費金額の押し下げを通じて経済を収縮させる効果を持つことは事実である。しかし、財政再建が日本にとって急務であることを考えると、今回消費税増税を見送ることは日本の国際的信用を傷つける可能性が高い。激変緩和措置導入などの策を講じながら、粛々と増税を実行するべきであると考えている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
消費税増税が経済に与える影響
現行法通りの増税実施が最適。小刻みな引き上げは非現実的。
2013年09月03日
-
4-6月期法人企業統計と二次QE予測
経常利益は3四半期連続で過去最高/二次QEは下方修正を予想
2017年09月01日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年8月消費統計
サービス消費が強く、総じて見れば前月から小幅に増加
2025年10月07日
-
財政悪化が日本経済にもたらす影響とリスクの定量評価
成長力強化と財政健全化で将来の財政危機発生リスクの抑制を
2025年10月07日
-
日本財政の論点 – PB赤字と政府債務対GDP比低下両立の持続性
インフレ状態への移行に伴う一時的な両立であり、その持続性は低い
2025年10月06日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日