サマリー
◆2013年4-6月期のGDP一次速報は堅調な景気拡大を裏付けるものであった。この結果を受けて、大和総研では予定通り2014年4月に消費税率が5%から8%に、2015年10月に8%から10%に引き上げられると考えている。本レポートでは、2回の消費税増税が日本経済に与える影響をどのように想定しているか、そして、消費税率引き上げのパターンを変更した場合にどのような影響が及ぶかということについて、マクロモデルを用いた試算値を示す。
◆予定通り2014年4月に消費税率が5%から8%に、2015年10月に8%から10%に引き上げられた場合、経済成長率に対して、2013年度に0.54%pt、2014年度に▲1.42%pt、2015年度に0.04%pt、2016年度に▲0.33%ptの影響を与える見込みである。
◆消費税引き上げのパターン毎の試算結果からは、①徐々に増税を行う方が経済に対する下押し圧力が小さいこと、②徐々に増税を行うケースでも、増税を完了した年には経済に対する下押し圧力が大きいこと、③どのような増税パターンでも、増税が完了した後には増税が無いケースと比べてGDPを0.7%程度下押しするという結果に変わりは無いことが見出せる。
◆ただし、経済への影響が大きい程税収の増加幅も大きいことに注意が必要である。経済への影響と税収増はトレードオフであるため、財政再建と経済成長の双方を実現するために、どの増税ケースが最適であるかを見極める必要がある。
◆現実的には、現在決定している増税方法を変更する場合、新たに法律案を提出して国会を通す必要があるという意味で、多大な政治的なコストが発生する。さらに、小刻みな増税は事業会社に対してシステム対応などの追加的なコストを生じさせる。こうした様々な現実的コストを加味した場合、費用対効果で考えれば、現行法通りの増税を行うことが最適であると考えている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
消費税増税の可否を検証する
1997年とは大きく異なる経済環境が消費税増税の下地に
2013年09月03日
-
4-6月期法人企業統計と二次QE予測
経常利益は3四半期連続で過去最高/二次QEは下方修正を予想
2017年09月01日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
-
一億自己啓発社会の死角
データが示す、転職志向・子育て・ジェンダーにおける格差
2025年09月05日
-
2025年7月消費統計
需要側統計は強いが供給側は弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年09月05日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日