サマリー
◆日銀は「物価安定の目標」を導入したが、金融政策の枠組み自体が変わったわけではない。とはいえ、政府との共同声明が発表され、「当面は1%」という目途が明示されなくなったという点で一つの転換点であることも事実である。
◆実物経済と金融が表裏一体であることを考えれば、政府にも同等の責任があり、政府がデフレ問題の責任を金融政策に押し付けるようなことになれば、人々の物価見通しが安定して上昇することは期待できない。物価目標の設定はゴールではなく、政府と日銀がその実現のためにどう行動するかが問題である。
◆デフレの構造的な要因を単位労働コストの背景から整理すると、デフレ脱却には金融緩和のもとで企業の収益基盤を強化しつつ、企業の再生や再雇用が円滑に行われるセーフティネットを構築することが重要である。
◆10%の円安ドル高は、2年目以降実質GDPを0.2~0.4%pt程度改善させることになる。為替レートが足元の水準で1年以上横ばいであったとしても、過去の経済行動を前提とすれば、CPIへの押し上げ効果はかなり小さい。とはいえ、円安が1年ではなく長期にわたって維持されれば話が変わる。景気拡大によるインフレ圧力が累積するため、物価は徐々に上昇していくだろう。
◆円安が長期間続いたとしても物価が上昇するまでにはかなりの時間を要する。また、円安から円高方向へ反転すれば、景気の振幅が高まってインフレ目標の達成時期がむしろ遠ざかる可能性がある。持続的な物価の上昇に必要なことは持続可能な経済成長である。円安を活かして規制・制度改革を進めるべきであり、短期的な「成長率」よりも中長期的な「成長力」を重視すべきである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
失業リスクが偏在する脆弱な雇用構造
雇用構造がもたらす必需的品目の需要増加と不要不急品目の需要減少
2012年08月10日
-
ドル基軸通貨体制の中で円高を解消していくには
ドル基軸通貨体制は変わらない。長い目でみた円高対策が必要
2011年12月13日
同じカテゴリの最新レポート
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 高市政権の成長戦略、骨太の方針で実質賃金は本当に増加するのか?
①時間あたり労働生産性の引き上げ、②1人あたり労働時間の増加、の2点が1人あたり実質賃金の増加に向けたカギ
2026年06月25日
-
生成AIシミュレーションと金融経済分析
応用研究事例から考えるメリットと注意すべき特性や課題
2026年06月23日
-
2026年5月全国消費者物価
エネルギーのマイナス幅縮小も、食料等の非耐久財の伸び率は縮小
2026年06月19日
最新のレポート・コラム
-
資金循環統計からみる家計金融資産の現状
2026年3月末の金融資産は2,386兆円に。現預金比率は47%に低下
2026年06月26日
-
日本での実質株主確認制度導入に向けた議論
会社法中間試案では2つの制度の導入を検討
2026年06月26日
-
米国:AI活用は続くが、「選別」も本格化へ
「選別」は過剰投資を抑制も、信用リスク・資産価格への波及に注意
2026年06月25日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 高市政権の成長戦略、骨太の方針で実質賃金は本当に増加するのか?
①時間あたり労働生産性の引き上げ、②1人あたり労働時間の増加、の2点が1人あたり実質賃金の増加に向けたカギ
2026年06月25日
-
「形式的・機械的な議決権行使」批判について考える
2026年06月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表
本質的な取組みと丁寧なエクスプレインが期待される
2026年04月27日
-
第229回日本経済予測
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年05月25日
-
変革迫られる学校法人の資産運用
AOP対応は、少子化・インフレの荒波を乗り越えるための第一歩
2026年05月07日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
コーポレートガバナンス・コードの改訂案が公表
本質的な取組みと丁寧なエクスプレインが期待される
2026年04月27日
第229回日本経済予測
混迷する中東情勢、その先で問われる日本経済の構造転換①「持続的成長」の条件、②資産形成と成長の好循環、を検証
2026年05月25日
変革迫られる学校法人の資産運用
AOP対応は、少子化・インフレの荒波を乗り越えるための第一歩
2026年05月07日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

