特例公債法案の早期成立を望む~日本版「財政の崖」を回避せよ

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2012年10月18日

  • 齋藤 勉
  • 調査本部 常務執行役員 リサーチ担当 鈴木 準

サマリー

◆2012年9月7日、第180回国会は閉会し、特例公債法案は審議未了のまま廃案となった。IMFが日本に対し同法案の成立を促すなど、国際的に注目される問題となっているが、10月18日現在、成立にこぎ着けられるという見通しは立っていない。

◆特例公債法案が不成立のまま従来通りの歳出が行われた場合、11月にも一般会計の財源は枯渇する見込みである。政府は異例の措置として予算執行の抑制を閣議決定し、地方交付税の交付を遅らせるなどの手段を講じている。

◆予算執行の抑制によって、一部の地方公共団体では借り入れが増加して金利負担が発生するなど、国民や住民の負担が増加している。特例公債法案の不成立によって、景気への負荷が強まり、また、人々の税負担が増加しているということを、認識すべきだ。

◆予算執行の抑制が行われても、特例公債法案が成立しない場合、12月中には財源の枯渇が避けられない。その場合、社会保障給付や自衛隊、警察等の活動などの行政サービスに影響が及ぶ可能性がある。また、国債の発行スケジュールに変更が迫られることも考えられ、市場の不安定さが増す懸念がないとはいえない。

◆米国では、2012会計年度から2013会計年度にかけて財政赤字が急速に縮小し、経済に悪影響を与えそうだという「財政の崖」が大問題になっている。日本では、復興需要の盛り上がりが期待通りの状況にあるとはいえず、さらに特例公債法案未成立による政府歳出の執行抑制という事態になっている。政府の歳出財源の枯渇となれば、これはいわば日本版「財政の崖」である。

◆日本経済には、課題が山積している。日本版「財政の崖」を回避し、政治と国民論議を大きな課題に向けていくために、特例公債法案の早期成立を強く要望したい。

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