サマリー
◆2012年4-6月期の日本経済は、政策効果やうるう年などの影響で高めの成長となった同年1-3月期より成長ペースが鈍化したものの、東日本大震災に伴う復興需要と底堅く推移する個人消費が支えとなり、堅調な回復が続いた。実質GDP成長率(一次速報)は、市場コンセンサスを下回ったが、前期比年率+1.4%と4四半期連続のプラス成長となった。GDPデフレーターは前年比▲1.1%と市場コンセンサス(同▲0.8%)を下回り、11四半期連続で低下した。
◆需要項目別に見ると、個人消費、設備投資、公共投資などがプラスに寄与して、実質GDP成長率を押し上げた。個人消費は、(1)エコカー補助金の効果、(2)消費者マインドの改善に伴う外食・旅行といったサービス消費の増加が支えとなり、5四半期連続のプラスとなった。設備投資は、先行きの景気に対する不透明感から投資を手控える動きもあったが、前期に落ち込んだ反動増に加えて、復興需要やスマートフォン関連の投資などがプラスに寄与したため、2四半期振りの増加に転じた。公的固定資本形成は、復興需要が徐々に顕在化するなか、2四半期連続の増加となった。
◆今後の日本経済は、東日本大震災に伴う復興需要や底堅い個人消費を支えにして、緩やかな回復軌道を辿ると考える。しばらく「内需偏重」の経済回復が続く見込みである。日本経済の先行きの下振れリスクとして、(1)「欧州ソブリン危機」の深刻化、(2)海外経済の減速、(3)円高の長期化、(4)エコカー補助金終了や消費マインドの軟化に伴う個人消費の鈍化、などに注意が必要となろう。これまで経済回復を牽引してきた個人消費の鈍化を踏まえると、7-9月期の実質GDP成長率は4-6月期より減速する公算である。
※当社は、8月16日(木曜日)に「第174回 日本経済予測」の発表を予定している。
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