サマリー
◆2月14日に発表された「中長期的な物価安定の目途」という日本銀行の政策決定は、事実上の「インフレ・ターゲティング」と解釈されている。本稿では、今回の発表を転機に、日銀の金融政策が大きく変わるのか考察する。
◆基準指標を消費者物価の「コアコア」連鎖指数に変更するなど、多少の修正は必要となるだろうが、日銀が導入した「インフレ・ターゲティング」は、フレームワークとして、他国に比べて遜色を見ない。今後は、同フレームワークを導入した上で、どのような金融政策ツールを採用するのかが注目される。「インフレ・ターゲティング」の導入が、直接、期待インフレ率に働きかけるとは考えられない。日銀が今、実践できる政策として認識しているのは、金融緩和による実体経済への刺激であろう。
◆しかし、金利が十分低い中、緩和的な非伝統的金融政策が採られた日本の2000年代と、リーマン・ショック後の英国で実施された、資産買取プログラムの例を見ると、必ずしも金融緩和が実体経済の刺激となるとは結論付けることができない。需要不足のデフレが続く中、金融政策に頼りすぎるべきではない。今回の日銀の政策は、既存の金融政策ツールだけでは限界があることを再主張し、経済ファンダメンタルズの改善における政府の役割の重要性を暗に強調するメッセージを送った点で、そのロジックに変化は無い。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年5月全国消費者物価
米価格の上昇が他の食料品や外食など関連品目の価格にも波及
2025年06月20日
-
2025年5月貿易統計
輸出数量は横ばい圏を維持も、円高効果等で輸出額は8カ月ぶりに減少
2025年06月18日
-
2025年4月機械受注
民需(船電除く)は減少し、コンセンサス通りの結果だった
2025年06月18日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日