日銀の金融政策は変わるのか

フレームワーク変更で一歩前進。同時に、金融政策ツールの限界を暗に示す。

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2012年04月06日

サマリー

◆2月14日に発表された「中長期的な物価安定の目途」という日本銀行の政策決定は、事実上の「インフレ・ターゲティング」と解釈されている。本稿では、今回の発表を転機に、日銀の金融政策が大きく変わるのか考察する。

◆基準指標を消費者物価の「コアコア」連鎖指数に変更するなど、多少の修正は必要となるだろうが、日銀が導入した「インフレ・ターゲティング」は、フレームワークとして、他国に比べて遜色を見ない。今後は、同フレームワークを導入した上で、どのような金融政策ツールを採用するのかが注目される。「インフレ・ターゲティング」の導入が、直接、期待インフレ率に働きかけるとは考えられない。日銀が今、実践できる政策として認識しているのは、金融緩和による実体経済への刺激であろう。

◆しかし、金利が十分低い中、緩和的な非伝統的金融政策が採られた日本の2000年代と、リーマン・ショック後の英国で実施された、資産買取プログラムの例を見ると、必ずしも金融緩和が実体経済の刺激となるとは結論付けることができない。需要不足のデフレが続く中、金融政策に頼りすぎるべきではない。今回の日銀の政策は、既存の金融政策ツールだけでは限界があることを再主張し、経済ファンダメンタルズの改善における政府の役割の重要性を暗に強調するメッセージを送った点で、そのロジックに変化は無い。

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