サマリー
◆ユーロ圏の2024年4-6月期の実質GDP成長率(改定値)は前期比年率+1.3%となり、わずかながら前期から加速する形となった。速報公表前の市場予想で前期からの減速が見込まれていたことに鑑みれば、ユーロ圏経済は想定以上に底堅く推移したといえる。前期と同様、鉱工業の不振が続く一方、サービス業の好調さがGDPを押し上げたとみられる。
◆7月の景況感指数(総合、欧州委員会発表)は前月差▲0.1ptと小幅に低下し、95.8となった。景況感指数の水準に単純に照らせば7-9月期のGDPも小幅なプラス成長になることを示唆するが、裏を返せば、欧州経済の回復ペースは引き続き緩やかなままである。景況感指数の内訳では、消費者信頼感の回復が続く一方、サービス業も含めて、企業部門の景況感が悪化しており、長引く鉱工業の不振が、関連するサービス業にも波及している可能性が示唆される。
◆また、マインド面に関して、年初から回復をけん引してきた将来に対する期待が足元で低下に転じている点には注意が必要である。見通しが慎重化した背景には、金融政策を巡る不透明感、米国経済の減速懸念、中東での地政学リスクの高まりなどが指摘されるが、これ加えて、オリンピックで一時休戦していたフランス議会での駆け引きが再開されることが目先の注目点となる。
◆英国の2024年4-6月期の実質GDPは前期比+0.6%(前期比年率+2.3%)となった。2四半期連続で前期比年率+2%を上回る高めの成長率となり、英国経済は2024年に入り堅調なペースでの成長が続いている。また、BOEが8月1日に0.25%ptの利下げを発表し、利下げ局面に入ったことは、英国経済の成長持続をサポートする要因になるとみられる。もっとも、BOE内部では8月の利下げ決定に際しても意見が割れており、追加利下げについては慎重に進めるとみられる。
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