サマリー
◆ECBは6月の理事会で市場予想通り、4年9ヵ月ぶりとなる利下げを実施した。先行きについては経済指標次第という従来のスタンスを維持し、追加利下げに関する情報は出されなかったが、ラガルド総裁は金融政策が巻き戻し局面に入った可能性が高いことを認めており、ECBは緩やかなペースで利下げを続けていくとみられる。
◆欧州における2024年最大の政治イベントである欧州議会選挙では、右派が総じて勢力を拡大する結果となった。しかし、中道、リベラルグループによる過半数は維持されており、選挙結果が欧州議会の政策運営に与える影響は限定的となろう。
◆一方、欧州議会選挙の結果が各国政治に与える影響には注意が必要である。フランスでは、極右政党・国民連合が欧州議会選挙で最多票を獲得したことを受け、マクロン大統領は議会下院を解散し、総選挙の実施を決定した。世論調査によれば国民連合が選挙で第一党になる可能性が高いとみられ、ばら撒き政策による財政悪化懸念は、現状の財政状況の悪さと相俟って金利上昇圧力になっている。EU加盟国のうち、フランスなどの7ヵ国は欧州委員会による過剰赤字手続き入りとなったこともあり、緊縮財政、もしくは信認低下による金利上昇の二者択一を迫られる可能性がある。
◆英国では、5月22日にスナク首相が下院議会を解散し、7月4日に総選挙を実施することを決めた。現与党・保守党は支持率で労働党に大幅なリードを許しており、総選挙では労働党への政権交代が起こる可能性が極めて高い。もっとも、現在の労働党は中道的な政策を志向していることに加え、財源確保の難しさから、大胆な政策転換は起こりづらい。
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