サマリー
◆ユーロ圏の2023年10-12月期の実質GDP成長率(改定値)は前期比+0.0%となり、辛うじてテクニカル・リセッションを回避したものの、景気停滞が続いていることを改めて確認させる結果となった。もっとも、インフレ率の鈍化による実質賃金の増加やマインドの改善など、経済の再加速に向けた材料は増えつつある。
◆ただし、10-12月期にマイナス成長となったドイツでは、実体面、マインド面ともに出遅れ感が目立つ。外需の停滞に加えて、エネルギーコストの上昇や「債務ブレーキ」再開による緊縮財政など、ドイツ経済は多くの問題を抱えており、先行きも低成長が続くとの見方が広がりつつある。ドイツの低成長が足を引っ張る中で、ユーロ圏全体としても力強い成長は見込み難い。
◆ECBは2024年1月の理事会で、3会合連続となる政策金利の据え置きを決定した。先行きについては、これまでと同様、データ次第という姿勢が示され、利下げ開始の判断に際しては、インフレ率に加えて、賃金の動向が重要となろう。1月の理事会以降に公表された2023年10-12月期の妥結賃金は引き続き高い伸びを維持し、インフレ圧力の低下を確認するには不十分な結果となった。5月に公表される2024年1-3月期のデータを確認した後、6月理事会での利下げ開始という従来の見方を維持する。
◆英国の2023年10-12月期の実質GDP成長率は前期比▲0.3%と2四半期連続のマイナス成長となり、英国経済のテクニカル・リセッション入りが確認された。ただし、個人消費を取り巻く環境の改善は英国もユーロ圏と同様であり、先行きについては持ち直しに向かう可能性が高まっている。
◆BOEは2月1日に4会合連続での政策金利の据え置きを公表した。インフレ率、賃金上昇率の高さから、BOEは引き続き相対的にタカ派的なスタンスを維持しており、ECBよりやや遅れ、8月の利下げ開始を見込む。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日