サマリー
◆ユーロ圏の2023年10-12月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比+0.0%となり、マイナス成長を見込んでいた市場予想(Bloomberg調査:同▲0.1%)をわずかに上回った。極めて小幅ながらプラス成長に転じ、2四半期連続のマイナス成長によるテクニカルリセッションをかろうじて回避する結果となった。もっとも、マイナス成長を免れたとはいえ、ユーロ圏経済はほぼゼロ成長であり、停滞が続いているという評価は変わらない。
◆国別では、ドイツは前期比▲0.3%と、事前に公表されていた暫定値通りのマイナス成長となり、フランスは2四半期連続で横ばいとなった。一方、速報段階で成長率が公表される10ヵ国のうち、6ヵ国(ベルギー、スペイン、イタリア、ラトビア、オーストリア、ポルトガル)はプラス成長となり、特にポルトガル(前期比+0.8%)、スペイン(同+0.6%)が高めの成長となった。
◆2024年に入ってからの状況に関して、景況感指数を確認すると、1月は前月差▲0.1ptと3ヵ月ぶりに低下した。ただし、低下幅は非常に小幅であり、1月の指数の水準は2023年10-12月期平均や7-9月期平均を上回る。2023年初から悪化が続いてきた景況感指数は、2023年末になって漸く下げ止まりの兆しが見えてきた。こうした景況感指数の動きを踏まえれば、2024年1-3月期は明確なプラス成長となることが期待される。
◆ただし、景気の先行きについては引き続き下振れリスクが優勢と思われる。海外経済の減速による輸出の低迷などから、欧州最大の経済規模を持つドイツは1-3月期も停滞が続くと見込まれる。また、紅海での緊張の高まりを背景とした物流停滞が経済活動を阻害する可能性があり、動向を注視していく必要があろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日