サマリー
◆ユーロ圏の2022年10-12月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比+0.1%(年率換算+0.5%)と、市場予想に反してプラス成長を維持したものの、7四半期ぶりの低成長となった。ただ、昨年2月のロシアのウクライナ侵攻、それを機にしたエネルギー・食料品等の価格高騰、高インフレを抑え込むためのECBによる金融引き締め、エネルギー供給懸念等を嫌気した企業や消費者のマインドの急落等、幾多の逆風に晒されてきた。このような中でユーロ圏はプラス成長を維持し、2022年全体では+3.5%成長となった。もっとも、2022年は+2.0%の成長のゲタを履いており、実感としては割り引いてみる必要があるだろう。
◆10-12月期は、主要国のうちドイツ(前期比▲0.2%)とイタリア(同▲0.1%)がマイナスに転じたのに対して、フランス(同+0.1%)とスペイン(同+0.2%)はプラスと結果は分かれたが、総じてゼロ近傍の低成長という範疇であろう。
◆ユーロ圏では、穏やかな天候(暖冬)でエネルギー需給逼迫への懸念が後退したことを背景に、天然ガス等のエネルギー価格が下落している。また、各国政府が家計や企業に対して様々な支援策を実施して負担軽減を図り、部分的にインフレ率が抑制されたことも経済活動を支えたと考えられる。一見すると、今回のGDPの結果は、年末にかけて過度な悲観論が後退してきた状況と整合的かもしれない。
◆だが、需要項目別に見ると、個人消費の落ち込みを、輸入の減少による外需のプラス寄与や投資の増加が穴埋めする形となっており、ポジティブに評価することは難しい。消費者マインドは下げ止まりから改善へと変化しているが、実際の財布の紐は堅いままで個人消費は低迷しており、先行きへの不透明さはなかなか払拭できていない。
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