サマリー
◆2022年2月のロシアのウクライナ侵攻開始直後から、欧州の消費者や投資家には悲観主義が蔓延し、コロナ危機から3年も経たないうちに再び景気後退(リセッション)は不可避との見方が定着した。しかし、2023年に入りこの悲観的な見方に変化が訪れつつある。その背景には、エネルギー価格の下落や、中国のゼロコロナ政策の解除が早く進み、世界的な需要促進につながるとの観測が挙げられる。
◆しかし欧米中央銀行が猛烈な勢いで引き締めている金融政策は景気に中立な水準を上回るレンジに入りつつあり、金融危機の連鎖反応を引き起こす危険性があるとの指摘は後を絶たない。特に金融当局や中央銀行は、年金基金や投資ファンドといったノンバンク金融仲介(Non-Bank Financial Intermediation: NBFI) セクターにおける、(非公開の)レバレッジと非流動性資産の保有の多さを警戒している。NBFIは、規制当局による監督を概ね回避しており、たとえ資産が減損されたとしても公開する義務はなく、増大する損失を認める必要がない。つまり、金融危機に関する事前の警告信号が鳴らない状態にあり、金融当局はどこに地雷が埋まっているか、金利がどの水準になるとシステム崩壊を招くのかを把握できていない。
◆英国ではブレグジットによって獲得した、EU規制にとらわれない自由度を活用し、リーマン・ショック後に導入された金融規制を緩和する動き(通称エジンバラ改革)が加速している。しかし過去の危機で行った規制改革を否定することは、セーフガードを弱めリスクテイクを助長するだけとの声もあり、英国が金融危機再来のリスクの発信源になるとの指摘も多い。経済成長や国際競争力の向上を目指し、金融規制緩和を推し進める英国だが、規制緩和が金融システムにどのような副作用があるかは誰も分からない。また2023年の夏まで利上げが継続される可能性が高く、インフレや金利上昇による実体経済への影響はこれからとみられている。つまり景気後退入りが回避されたのではなく、単に遅れているだけとの見方が適切なのかもしれない。
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