ロシア産石油価格上限スキームは2023年のインフレに影響を与えるのか?

ロシア側の対抗措置の内容が鍵に

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2022年12月23日

サマリー

◆12月5日、EUを含むG7諸国とオーストラリアは、海上輸送されるロシア産石油価格に対する上限スキームを開始した。同スキームは価格上限(12月5日時点で1バレル当たり60ドル)を上回るロシア産石油の海上輸送に対し、物流や保険など関連サービス提供を禁止するものである。同スキームが石油価格の上昇を招くとの懸念も強かったが、スキーム開始から2週間後の時点ではその兆候はまだ確認されていない。

◆ロシアメディアによれば、ロシア産石油の価格上限に対する当局の対応がほぼ決定し、対抗措置を規定するロシアの大統領令案が概ね合意されたという。価格上限スキームに参加した国に石油を販売しないという方針は基本的に採用されたが、政府の許可があれば、販売禁止を回避する例外規定もあるという。大統領令は交付と共に発効し、2023年7月1日まで有効だが、延長の可能性もある。

◆価格上限スキームは、ロシアの輸出収入を抑えながら、世界のエネルギー市場への安定した供給を維持することが目的であり、エネルギー価格(特にガソリンなどの燃料価格)が高騰している時において、インフレやエネルギー価格の安定化に貢献するはずである。ただしロシアが予想外の対抗措置をとった場合、再び2023年はインフレ急騰に見舞われる可能性も否定できない。

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