サマリー
◆12月5日、EUを含むG7諸国とオーストラリアは、海上輸送されるロシア産石油価格に対する上限スキームを開始した。同スキームは価格上限(12月5日時点で1バレル当たり60ドル)を上回るロシア産石油の海上輸送に対し、物流や保険など関連サービス提供を禁止するものである。同スキームが石油価格の上昇を招くとの懸念も強かったが、スキーム開始から2週間後の時点ではその兆候はまだ確認されていない。
◆ロシアメディアによれば、ロシア産石油の価格上限に対する当局の対応がほぼ決定し、対抗措置を規定するロシアの大統領令案が概ね合意されたという。価格上限スキームに参加した国に石油を販売しないという方針は基本的に採用されたが、政府の許可があれば、販売禁止を回避する例外規定もあるという。大統領令は交付と共に発効し、2023年7月1日まで有効だが、延長の可能性もある。
◆価格上限スキームは、ロシアの輸出収入を抑えながら、世界のエネルギー市場への安定した供給を維持することが目的であり、エネルギー価格(特にガソリンなどの燃料価格)が高騰している時において、インフレやエネルギー価格の安定化に貢献するはずである。ただしロシアが予想外の対抗措置をとった場合、再び2023年はインフレ急騰に見舞われる可能性も否定できない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日