サマリー
◆これまでの高インフレと企業景況感・消費者信頼感の悪化の累積効果によって、足もとの生産や個人消費のデータは景気悪化を示唆している。一方で、先行きへの期待感を中心に、マインド悪化の下げ止まりから改善の兆しも見え始めている。2022年末から2023年初めにかけてマイナス成長に陥るというシナリオの蓋然性が高まる一方、景気の谷は浅く、当初想定したほど深刻な景気後退には至らないとの見方が強まっている。
◆ただ、2022年を覆っていた不透明感・不確実性は、2023年になっても払拭できないだろう。つまり、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が欧州経済の重しになっている構図に変化は見られず、エネルギー供給への懸念は、企業や家計に慎重な支出行動を強いるだろう。
◆高インフレに対処するため、ECBやBOEは政策金利を大幅に引き上げてきたが、2022年最後の金融会合では揃って利上げ幅を縮小させた。年末にかけてインフレ率はピークアウトした可能性があるが、2023年のインフレ鈍化ペースは緩慢になると見込まれる。中央銀行は景気減速への配慮よりもインフレ抑制を重視するタカ派のスタンスを鮮明にしており、2023年前半まで利上げは続く可能性が出てきた。
◆ユーロ圏経済を取り巻く環境は引き続き混沌としており、マイナス成長が短期間で済んだとしても、2023年央から年末にかけてエネルギー供給懸念が再びネックになり、成長率の加速は限定的にとどまる可能性が高い。
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