サマリー
◆9月23日、英国クワルテング財務相が発表した「ミニ予算」の内容が、英国の金融市場を大きく揺らしている。「ミニ予算」では既に発表されていた1,500億ポンドのエネルギー支援策に加え、大型減税を行うが、その財源の大部分は数百億ポンドの国債発行による借入である。週明け9月26日の金融市場も大混乱に見舞われ、ポンドは対ドルで過去最安値をつけ、10年債指標金利も急上昇するなど金融街に激震が走ったと言っても過言ではない。その後、BOEは英国債の著しい下落(金利は上昇)を受け、9月28日より長期の英国債の一時的な買い入れを行うとの声明を発表した。今回の減税は、サッチャー政権下でローソン財務相が減税による経済成長を目指した時よりも大規模で、1972年以来半世紀ぶりの大型減税となる。その財源のために財務省は英国債務管理局に対し、現会計年度にさらに624億ポンドの資金調達を命じ、総計1,939億ポンドへ上方修正している。
◆今回のミニ予算では住宅取得時にかかる印紙税が引き下げられたものの、住宅ローン金利の上昇で、住宅購入が大きく冷え込み、英国の住宅価格は前年同月比10%以上のマイナスとなる可能性も指摘されている。既存の固定金利型住宅ローン保持者は固定金利期間が終了したと同時に、返済額がほぼ倍増することになり、住宅ローン破綻が多発する可能性がある。リーマン・ショック以降の異次元緩和による低金利の継続で、先進国で過剰債務の問題は度々指摘されてきた。実際に金利の急上昇に見舞われた英国で、どのような金融ストレスが発生するのか、英国発の金融危機が発生するのかを注視する必要がある。
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