ロシア国債デフォルト騒動の本質
返済能力も意思もあるロシア政府は徹底抗戦の構え
2022年07月05日
サマリー
◆2022年6月27日、西側諸国の報道機関は、5月27日に利払い期日を迎えた2本の外貨建てロシア国債の猶予期間が失効し、ロシアが1918年以来となる対外債務のデフォルトに陥ったと報じた。一方、ロシア側はこの報道を真っ向から否定している。
◆ロシア財務省は、返済義務を履行するため5月20日にはロシア連邦証券保管振替機関(NSD)に利払い資金を送金した。さらにNSDは、ロシア国債の外国人保有者のための仲介機関にあたる、国際証券決済機関のユーロクリアに5月24日にドルを、5月25日にユーロの支払いを期限内に送っている。ただ資金はコンプライアンス(法令順守)上の理由でユーロクリアの判断により、最終投資家へ振り込まれなかった。このため、ロシア政府は再三にわたり、返済能力も意思もあるのに、西側諸国の制裁により人為的なデフォルトに陥らされそうになっていると発言している。
◆金融市場は既に数カ月にわたり、デフォルトは時間の問題とみてきただけに、6月27日のデフォルト報道は、「象徴的なもの」との見方が強い。ロシア国債は侵攻直後に暴落し、この数カ月間、デフォルトが近いことを示唆する水準で取引されているため、市場の反応もほとんど見られなかった。一方、ロシア政府は今回のデフォルト騒動に徹底抗戦の構えを見せているのが実情である。ウクライナ紛争中のロシア政府に対して、海外投資家が今後、法廷闘争を起こしたとしても勝てる確率は低いため、当面の間、デフォルト騒動に決着がつけられることは難しいと思われる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年08月15日
2022年4-6月期GDP(1次速報)
個人消費の増加等で前期比年率+2.2%となるもGDIはマイナス成長
-
2022年08月12日
経済指標の要点(7/20~8/12発表統計分)
-
2022年08月10日
アメリカ経済グラフポケット(2022年8月号)
2022年8月8日発表分までの主要経済指標
-
2022年08月09日
企業に求められる人的資本と企業戦略の紐づけ、および情報開示
有価証券報告書における情報開示は実質義務化?
-
2022年08月15日
日本の感染症対応力は世界18位
よく読まれているリサーチレポート
-
2022年07月20日
日本経済見通し:2022年7月
感染再拡大を踏まえGDP見通しを改訂/電力需給対策の効果は?
-
2022年07月20日
米国経済見通し 既に景気後退にあるのか
景気後退リスクが高まる「魔の6ヵ月」が控える
-
2022年05月25日
日本のインフレ展望と将来の財政リスク
コアCPI上昇率は2%程度をピークに1%弱へと低下していく見込み
-
2022年06月22日
日本経済見通し:2022年6月
物価高対策の在り方/「新しい資本主義実行計画」を読む
-
2022年06月22日
中国経済見通し:2022年下半期に本格回復へ
景気浮揚のための政策パッケージを発表