サマリー
◆欧州に大きなショックをもたらしたロシアのウクライナ侵攻から約4ヵ月が経過したが、収束の目途が立っていない。まとわりつく負のオーラを払拭できない中、ウクライナ侵攻の長期化に伴って、欧州経済の見通しは下方修正されており、特に2023年の下方修正幅が拡大している。
◆EUは段階的にロシアへの経済制裁を強化しているが、ロシア向けの輸出が半減する一方で、ロシアからの輸入は価格高騰にも押し上げられて高水準を維持しているというアンバランスな状態にある。また、ロシアの報復措置として、徐々にガス供給が絞られており、冬への備えを急がなければならない。
◆EUの中長期的な成長戦略の一つとして重要な“脱炭素化”の動きに対して、エネルギーの“脱ロシア化”の短期的な圧力が加わったことで様々なコストが上昇している。日々の生活と“脱炭素化”の目標実現にどう折り合いをつけるか、人々はどこまでコスト増を許容できるか(やせ我慢できるか)。
◆停滞感が強まる中で、想定を大幅に上回る高インフレに対して、BOEやECBは忙しく動いている。昨年12月から利上げを開始したBOEは小幅な利上げを繰り返して、2023年のマイナス成長の可能性にも言及する等、インフレ対応と成長維持の両立の難しさを体現している。一方、ECBは、漸く利上げ競争のスタートラインに立って11年ぶりに走り出そうとしているが、出遅れ感は否めない。スタートダッシュをするのか、あるいは途中で息切れして立ち止まり、最悪後戻りするのか。域内の分断(fragmentation)の顕在化、すなわち再燃する構造問題にも対処する必要に迫られている。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
-
欧州経済見通し 相互関税で悲観が広がる
対米輸出の低迷に加え、対中輸出減・輸入増も懸念材料
2025年04月23日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日