サマリー
◆ロシアによるウクライナ侵攻開始から100日以上が経過し、ロシア軍によるウクライナ東部・南部の占領地域が広がるにつれ、ロシアに対する西側諸国の結束にもほころびが見え始めている。6月10日にロサンゼルスで開かれた民主党の資金集めイベントの席で米国のバイデン大統領は、侵攻前にウクライナのゼレンスキー政権に、ロシアによる侵攻の可能性についてデータを示しながら警鐘を鳴らしたが、ゼレンスキー大統領やその周辺は聞く耳を持とうとしなかったと主張した。ブリンケン国務長官も、ウクライナの領土割譲について決定するのはゼレンスキー政権との趣旨の発言をするなど、(領土割譲を条件とした)プーチン政権との交渉による停戦となってもウクライナの決定を尊重する方針を示している。
◆フランスのマクロン大統領は5月初旬に「ロシアに屈辱を与えるべきではない。そうすれば停戦時に、外交的な手段でプーチン大統領に脱出口を示すことができる」との考えを示し、ゼレンスキー大統領との緊張を高めていた。マクロン大統領が焦る背景には、足許で行われている国政選挙での苦戦が関係している。一方、EU最大の経済国、ドイツのショルツ首相も、プーチン大統領との交渉チャネルを絶たず、停戦の引き換えになる譲歩案を模索している。ただしそれは、ウクライナの広大な地域に対するロシアの武力による占領を許容することに近い。
◆侵攻当初は欧州発の第三次大戦勃発や、局地的とはいえ核兵器の応酬にまで発展するのではないかとの恐れもあり、欧州の世論ではロシアへの懲罰感情が強く、ウクライナを支援し、ロシアの敗北を願う声が強かった。しかし、侵攻開始から100日以上が経過し、エネルギーや食品価格高騰のあおりを受けたインフレで生活費危機が続くと、たとえウクライナが譲歩することになってでも、一刻も早い停戦を求める世論が目立つようになっている。さらに、EUでは停戦後を見据えてロシアとのビジネス再開準備を着々と進める企業も後を絶たないのが実情である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 仏財政不安、長期化の覚悟
国民世論の二極化で、決められない政治が続くリスクが高まる
2026年10月22日
-
欧州経済見通し 足元堅調もリスクは下向き
長引くインフレリスクと強まる金利上昇圧力
2026年09月17日
-
欧州経済見通し 引き続きインフレに警戒
猛暑で高まるインフレ上振れリスク
2026年08月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
-
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
-
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
-
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
-
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日
国税庁が非上場株式評価の方向性を公表
簿価純資産と収益力で評価する「残余利益方式」に統一の方向
2026年09月08日
GPIF経営委員会の8月開催が意味すること
基本ポートフォリオ見直しに向けて第一歩を踏み出したのか
2026年09月01日
日米協調介入は円安の是正にどこまで効果を発揮したのか?
更なる介入の合理性は低下。レジーム転換の有無が今後の焦点に
2026年09月14日
コーポレートガバナンス・コード改訂の焦点
企業の自律的な判断と実質を伴う説明が問われる
2026年08月27日
第230回日本経済予測(改訂版)
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年09月08日

