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西側諸国のウクライナ支援にもほころび

徹底抗戦のゼレンスキー政権に早期停戦を促す欧州

2022年06月17日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 菅野 泰夫

サマリー

◆ロシアによるウクライナ侵攻開始から100日以上が経過し、ロシア軍によるウクライナ東部・南部の占領地域が広がるにつれ、ロシアに対する西側諸国の結束にもほころびが見え始めている。6月10日にロサンゼルスで開かれた民主党の資金集めイベントの席で米国のバイデン大統領は、侵攻前にウクライナのゼレンスキー政権に、ロシアによる侵攻の可能性についてデータを示しながら警鐘を鳴らしたが、ゼレンスキー大統領やその周辺は聞く耳を持とうとしなかったと主張した。ブリンケン国務長官も、ウクライナの領土割譲について決定するのはゼレンスキー政権との趣旨の発言をするなど、(領土割譲を条件とした)プーチン政権との交渉による停戦となってもウクライナの決定を尊重する方針を示している。

◆フランスのマクロン大統領は5月初旬に「ロシアに屈辱を与えるべきではない。そうすれば停戦時に、外交的な手段でプーチン大統領に脱出口を示すことができる」との考えを示し、ゼレンスキー大統領との緊張を高めていた。マクロン大統領が焦る背景には、足許で行われている国政選挙での苦戦が関係している。一方、EU最大の経済国、ドイツのショルツ首相も、プーチン大統領との交渉チャネルを絶たず、停戦の引き換えになる譲歩案を模索している。ただしそれは、ウクライナの広大な地域に対するロシアの武力による占領を許容することに近い。

◆侵攻当初は欧州発の第三次大戦勃発や、局地的とはいえ核兵器の応酬にまで発展するのではないかとの恐れもあり、欧州の世論ではロシアへの懲罰感情が強く、ウクライナを支援し、ロシアの敗北を願う声が強かった。しかし、侵攻開始から100日以上が経過し、エネルギーや食品価格高騰のあおりを受けたインフレで生活費危機が続くと、たとえウクライナが譲歩することになってでも、一刻も早い停戦を求める世論が目立つようになっている。さらに、EUでは停戦後を見据えてロシアとのビジネス再開準備を着々と進める企業も後を絶たないのが実情である。

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