プーチン大統領も祝福したマクロン大統領の再選
次の焦点は6月の国民議会選挙の国民の審判
2022年04月27日
サマリー
◆4月24日に行われたフランス大統領選決選投票の結果、現職のマクロン大統領(得票率58.5%)が、反NATO、移民排斥を掲げる極右政党、国民連合のマリーヌ・ルペン候補(同41.5%)に勝利し再選を決めた。現職大統領の再選は、2002年のシラク大統領以来、20年ぶりの快挙となる。一方で、投票率は約72.0%、3割近くが棄権し、白紙投票も約5%近い異例の投票となった。反マクロン感情の多くは、それが棄権票として表現された可能性が高く、極右のルペン候補の大統領就任は阻止したい考えから、消去法による苦渋の選択であったこともうかがえる。
◆EUはこれまでロシアのウクライナ侵攻に対し、厳格な制裁を課し、ロシア経済に打撃を与えるとの目的で協調して対応できているが、万が一ルペン候補が勝利すれば、これが瓦解する恐れが指摘されていた。実のところマクロン大統領も欧州(EU)軍創設を呼びかけ、ロシアがウクライナ国境付近に軍事力を集結させ、今年に入りさらに軍事緊張が高まっていた際には、NATOとしてではなくEUとしての対応を示唆していた。しかし、ルペン候補はそれよりもさらに踏み込み、NATOの統合軍事組織からの撤退を公然と要求していたことも西側諸国は大いに警戒していた。
◆プーチン大統領は、今後のウクライナ情勢においても西側諸国との窓口としてマクロン大統領の再選を望んでいたとみられている。再選を受け、プーチン大統領は「国家事業の成功と健康を祈る」とマクロン大統領に祝福のメッセージを寄せた。さらに6月の国民議会選挙で親プーチン大統領を自認して、今回3位となったメランション首相誕生となれば、フランス国政での大きな対ロシア政策の変化が見られる可能性がある。仮に共和党の議席の多くが極右や極左勢力に大量に流れ、共和国前進が中道右派である共和党による政策協力を期待できないということになれば、フランス政界の混乱が予想される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
2022年08月15日
2022年4-6月期GDP(1次速報)
個人消費の増加等で前期比年率+2.2%となるもGDIはマイナス成長
-
2022年08月12日
経済指標の要点(7/20~8/12発表統計分)
-
2022年08月10日
アメリカ経済グラフポケット(2022年8月号)
2022年8月8日発表分までの主要経済指標
-
2022年08月09日
企業に求められる人的資本と企業戦略の紐づけ、および情報開示
有価証券報告書における情報開示は実質義務化?
-
2022年08月16日
コロナ下の生活習慣
よく読まれているリサーチレポート
-
2022年07月20日
日本経済見通し:2022年7月
感染再拡大を踏まえGDP見通しを改訂/電力需給対策の効果は?
-
2022年07月20日
米国経済見通し 既に景気後退にあるのか
景気後退リスクが高まる「魔の6ヵ月」が控える
-
2022年05月25日
日本のインフレ展望と将来の財政リスク
コアCPI上昇率は2%程度をピークに1%弱へと低下していく見込み
-
2022年06月22日
日本経済見通し:2022年6月
物価高対策の在り方/「新しい資本主義実行計画」を読む
-
2022年06月22日
中国経済見通し:2022年下半期に本格回復へ
景気浮揚のための政策パッケージを発表