サマリー
◆4月24日に行われたフランス大統領選決選投票の結果、現職のマクロン大統領(得票率58.5%)が、反NATO、移民排斥を掲げる極右政党、国民連合のマリーヌ・ルペン候補(同41.5%)に勝利し再選を決めた。現職大統領の再選は、2002年のシラク大統領以来、20年ぶりの快挙となる。一方で、投票率は約72.0%、3割近くが棄権し、白紙投票も約5%近い異例の投票となった。反マクロン感情の多くは、それが棄権票として表現された可能性が高く、極右のルペン候補の大統領就任は阻止したい考えから、消去法による苦渋の選択であったこともうかがえる。
◆EUはこれまでロシアのウクライナ侵攻に対し、厳格な制裁を課し、ロシア経済に打撃を与えるとの目的で協調して対応できているが、万が一ルペン候補が勝利すれば、これが瓦解する恐れが指摘されていた。実のところマクロン大統領も欧州(EU)軍創設を呼びかけ、ロシアがウクライナ国境付近に軍事力を集結させ、今年に入りさらに軍事緊張が高まっていた際には、NATOとしてではなくEUとしての対応を示唆していた。しかし、ルペン候補はそれよりもさらに踏み込み、NATOの統合軍事組織からの撤退を公然と要求していたことも西側諸国は大いに警戒していた。
◆プーチン大統領は、今後のウクライナ情勢においても西側諸国との窓口としてマクロン大統領の再選を望んでいたとみられている。再選を受け、プーチン大統領は「国家事業の成功と健康を祈る」とマクロン大統領に祝福のメッセージを寄せた。さらに6月の国民議会選挙で親プーチン大統領を自認して、今回3位となったメランション首相誕生となれば、フランス国政での大きな対ロシア政策の変化が見られる可能性がある。仮に共和党の議席の多くが極右や極左勢力に大量に流れ、共和国前進が中道右派である共和党による政策協力を期待できないということになれば、フランス政界の混乱が予想される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 追加関税の影響が顕在化
米国向け輸出が急減、対米通商交渉の行方は依然不透明
2025年06月24日
-
欧州経済見通し 対米通商交渉に一喜一憂
米英合意、米中間の関税引き下げは朗報、EUの交渉は楽観視できず
2025年05月23日
-
1-3月期ユーロ圏GDP 成長ペースは再加速
市場予想を上回る良好な結果、ただし先行きは減速へ
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日