サマリー
◆グローバルに見て、ロシアのウクライナ侵攻のマイナスの影響を強く受ける地域の一つが欧州である点に大きな議論はないだろう。ロシアとの関係、特に企業や家計の活動の糧であるエネルギーの依存度の高さから、欧州の経済成長は、ロシア(つまりプーチン大統領)の動向に大きく左右される。欧州は、その濃密な関係から脱却しようと模索し始めているものの、時間とお金を要するため、その道程は容易ではないだろう。欧州は、お金を二の次に、代替手段を確保するまでの時間稼ぎを優先しようとしているが、ロシアは様々な形で揺さぶりをかけている。
◆ECBは、純資産買入れの終了後しばらくしてから利上げを開始する方針を示している。今後の“データ次第”という姿勢を強調しているが、直近3月のインフレ率は前年比+7.5%とECBの想定(同+5.6%)を上回っている。ウクライナ問題の影響次第という不確実な要因を念頭に置きつつ、欧州経済が景気後退に直面しない限り、ECBが年末に利上げに踏み切る公算が大きくなっている。
◆ロシアに対する経済制裁に関しては、その解除の見通しは相当な不確実性を伴う。何をもって欧米が制裁を段階的にでも緩和していくかは不透明であり、一方の当事者であるロシアのプーチン大統領が、“作戦(紛争)”継続の意志を明確にしていることから、早期に制裁解除の環境が整う確率は低いと考えられる。
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