サマリー
◆3月25日夜にフランス大統領選の立候補受付が締め切られ、12候補が公式に出馬した。通常のフランス大統領選は国内問題が主要争点となるものの、今回はロシアのウクライナ侵攻を受けて、選挙キャンペーンのスタイルやアプローチも全て変更されている。マクロン大統領のライバル候補は、ウクライナ侵攻を巡り数カ月もその前線に立ってきた大統領との厳しい戦いを強いられている。
◆挑発的な言動で知られるジャーナリストで、2021年秋に早々と出馬を表明した反イスラム主義を掲げるゼムール候補は、ロシアの侵攻後、非難表明までに時間がかかったことから、支持率を大きく下げている。ただし、国民連合党首のルペン候補は長きにわたりプーチン大統領を称賛してきたにもかかわらず、世論調査ではマクロン大統領に次ぐ19%の支持率を獲得している。フランスのNATO脱退を主張しつつも、侵攻後の早い時点でプーチン大統領を非難したことが功を奏した。
◆ルペン候補支持者の間での楽観的なムードは、同候補が慣れ親しんだ移民よりも、一般市民の生活費危機といったテーマを、選挙運動の中心に切り替えたことも功を奏している。ロシアのウクライナ侵攻を契機に燃料や電気、ガス料金が上昇し、トラックやタクシー運転手、その他の道路利用者による抗議活動が地方で続く中、ルペン候補はエネルギー料金にかかる付加価値税(日本の消費税に該当)の税率を20%から5.5%に引き下げると公約している。ただマクロン大統領の支持率はウクライナ侵攻によって上昇しており、現時点では決選投票での勝利が確実視されている。ブレグジットで英国の地位が下がり、ドイツのメルケル首相が引退した今、マクロン大統領は再選によって、自身がEUの中心舞台に踊り出ることができると確信している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
欧州経済見通し 利下げ終了後の注目点
関税リスクは後退、財政悪化・金利上昇が新たなリスクに
2025年09月24日
-
欧州経済見通し 関税議論が一段落
米国による対EUの追加関税率は15%で決着
2025年08月22日
-
4-6月期ユーロ圏GDP かろうじてプラス成長
ドイツ、イタリアがマイナス成長転換も、好調スペインが下支え
2025年07月31日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日