サマリー
◆3月17日に中継役となるコルレス銀行から支払いを受けた米銀は、ロシア政府からの利払い処理を履行したため、ロシア国債デフォルトは一旦、回避された。利払いの詳細は発表されていないが、いずれかの海外口座にあるドル資金を送金することで、国内からの外貨送金禁止の制約を乗り越えた可能性がある。
◆2月下旬から3月上旬にかけてロシア国内の消費者が、制裁による外資系企業の撤退やルーブル安によって、家電や自動車、電気機器や家具の選択肢がなくなることや、価格上昇を恐れ、これら製品をパニック買いしたため、インフレ率は急上昇した。輸入減と海外市場の閉鎖によって、足下の国内需要は国産品にシフトし、企業も輸入から国内サプライヤーに切り替えるなどの措置を急いでいる。ただし、ロシア中銀はソ連時代のような人工的な価格統制は製品不足や品質低下を招き、経済の適応速度を落とすほか、寡占やカルテルにつながるため行わないことを宣言している。
◆紛争によって影響を受けた東部地域はウクライナ国内のとうもろこしや小麦生産の4割を占める。中央や西部での経済活動はかろうじて続けられており、農民は可能な限り畑に出て種まきを始めているというが、2022年の穀物収穫量や、輸出用に保管されていた穀物にどれだけ打撃があったかによって、ウクライナ経済や世界の食料供給への損失が左右されることになる。食料品価格の上昇に加え、ロシアが報復措置としてパラジウムやプラチナ等の貴金属、ニッケル等の卑金属の供給を制限すれば、世界的なサプライチェーンの混乱を招く恐れがある。
◆3月14日に英国議会の財務省特別委員会では、供給への問題やエネルギー市場での不安定さが拡大していることから、近い将来ディーゼル燃料やガスが配給制になる可能性が示唆されている。欧州の一部では4月までにディーゼルの配給が始まるかもしれず、既にドイツなどでは石油卸売り業者が顧客への販売を制限している。
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